2016年1月11日月曜日

[書評] 仮想通貨革命 野口悠紀雄



<目次>
第1章 通貨革命が始まった
第2章 きわめて斬新なビットコインの仕組み
第3章 ビットコインに続くもの
第4章 現代の通貨はどこに問題があるか
第5章 通貨革命は社会をどう変えるか
補論 公開鍵暗号と電子署名

■はじめに
 本書によれば、ビットコインに代表される仮想通貨が、PC、インターネットに次ぐIT革命による第三の波だという。ビットコインが話題になっていることは知っていたが、それほど重要なことだとは思わなかった。ビットコインは、日本ではまだほとんど取引されていないようだが、現在の通貨より優れているので、いつかは今のお金を駆逐するらしい。もちろんビットコインの普及により不利益を受ける人達(政府、銀行)が反発するだろうが、この流れは止められない。あと何年で今のお金に置き換わるのか楽しみだ。

■ビットコインの仕組み
①電子署名を用いてビットコインを送信すること
②取引をP2Pネットワークで維持するブロックチェーンに記録すること
③ブロックチェーン改ざん防止のため、プルーフオブワークの計算を課すこと

ビットコインの仕組みの基礎になった「ナカモト論文」によれば、1つの電子コインは、連続するデジタル署名のチェーンと定義される。つまり、ビットコインは署名を用いて受け渡しをしている。この際、なりすまし、改ざん、否認を防止するため、以下の三点を確認しなければならない。
①送金した者が、確実に署名者であること(他の者でないこと)
②通信途中で金額などが(傍受者などによって)書き換えられていないこと
③送付者は、送付の事実を後になって否認できないこと

「電子署名」、すなわち公開鍵暗号とハッシュ関数を用いた技術で解決している。

■ビットコインと電子マネーの違い
ビットコインと電子マネーとでは、維持運営する仕組みはまったく異なる。
電子マネーとしては、支払いに先立って入金し(「プリペイド型」)、その残額等の情報が記録されているICカードが主流である。

さらに電子マネーには、以下の2つのタイプがある。
  • クローズドループ型:電子マネーが利用されるたびに、発行者に戻すことで、二重使用を防止するタイプ。 例)
  • オープンループ型:利用された電子マネーが発行者を経由せずに転々流通できるタイプ。運営コストが高い。例)Edy
電子マネーの問題点は以下のとおり。
  1. 運営コストが高い。
    • クレジットカードと同様に、電子マネーでも手数料(カード利用額の2〜5%)を店舗側がカード発行会社に対して負担しなければならない。
  2. カード発行会社にとって手数料が安く、採算が合わない。
一方、ビットコインの利点は以下のとおり。
  1. P2Pネットワークによるブロックチェーンの維持と、プルーフオブワークの計算を課すことにより、二重使用を防止しており、運営コストが非常に低い。
  2. ビットコインは、通常の現金と同じように、転々流通することができる。
  3. 電子マネーでは、カードの盗難、紛失等のリスクがあるので、入金額に限度があるが、ビットコインでは、そうしたリスクはなく巨額な送金が可能になる。
  4. 電子マネーは特定の通貨に関連しており、国際送金には使用できない。これに対して、ビットコインは非常に低い送金コストで国際送金が可能になる。

■感想
本書は、ビットコインの技術的内容も非常に丁寧に説明している。その仕組みは非常に難解だが、インターネットと同様に、世の中を変えるインパクトがあるので、本書を何度も読んで理解したいと思う。
ビットコインは、政府や銀行が発行する現在の通貨と異なり、とてもリベラルなものと感じた。ビットコインが普及すれば、国境を越えて個人間で仕事を請け負うことができるようになるであろう。従来では送金コストが高くて成り立たなかったような小さなビジネスが国境を越えて成立することになりそうだ。発展途上国の優秀な個人が恩恵を受けそうだ。つまりグローバルでは、ますます貧富の格差が縮小される方向に移行していくだろう。


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