2015年10月14日水曜日

[書評]2045年問題 コンピュータが人類を超える日 松田卓也



<2045年問題 コンピュータが人類を超える日 松田卓也>
■目次 :
1章 コンピュータが人間を超える日―技術的特異点とは何か
2章 スーパー・コンピュータの実力―処理速度の進化/
3章 インターフェイスの最先端―人体と直結する技術/
4章 人工知能開発の最前線―意識をもつコンピュータは誕生するか/
5章 コンピュータと人類の未来―技術的特異点後の世界/
6章 コンピュータが仕事を奪う―大失業時代の予兆/
7章 人工知能開発の真意―コンピュータは人類を救えるか

一説によれば、2045年には、コンピュータの能力が全人類の知性を超える可能性があるという。本書では、人工知能が人間の職業を奪っていく状況だけでなく、映画「ターミネーター」や「マトリックス」などに描かれた、人間を支配する未来についてわかりやすく説明している。

■コンピュータと人間の違い
コンピュータが人間より優れている点は計算能力である。一方、人間は、画像や音声などの雑多な情報の中から意味のある情報を読み取るパターン認識能力が優れていると言われている。このパターン認識能力のおかげで、人間は人間の顔、イヌなどを抽象化して認識することができるのである。

人間が少ない情報から大きなパターンを認識する際のエラー例が紹介されている。
原始人が草むらの近くを歩いていると、草むらからガサガサという音がしたとします。この場合、近くに猛獣がいるかもしれないし、風で草がなびいているだけかもしれない。
そこで、この原始人は逃げることを選んだのですが、結果は単なる風でした(「タイプ1のエラー」)。

 また、別の原始人が草むらがざわめいているので、ほとんどの原始人は逃げたが、この原始人は風だと思って逃げなかった。しかし、実際に草むらに猛獣が潜んでいて、この原始人は食べられてしまった(「タイプ2のエラー」)。

ライプ2のエラーを犯した原始人はすべて食べられ、タイプ1のエラーを犯す原始人だけ、つまり怖がりな人間だけが生き残ったと言える。

■人工知能開発の最前線
現在、欧米では人間の脳にそっくりな人工知能をつくる開発に、大規模な投資が行われている。
1.アメリカのシナプス計画
IBMのSyNAPSE(Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics)計画は「認識するコンピュータ(Cognitive Computing)」の開発を目的とし、これは「進化したアルゴリズムと、シリコンの神経回路を駆使して、この認識するコンピュータは経験を通じて学び、事象間の相互関係を見出し、仮説を立て、蓄積していく」ものとされている。

2.ヨーロッパのヒューマン・ブレイン・プロジェクト
このプロジェクトでは、人間の大脳新皮質の最小単位である新皮質カラムをスーパーコンピュータでシミュレートしようとするものである。

いずれのプロジェクトも、チェスに勝つなど何か特定の目的だけに特化した「弱い人工知能」ではなく、意識を備えた「強い人工知能」の開発に向かおうとしている。

■コンピュータと人類の未来
未来にはコンピュータと人体が一体化され、人間の能力は格段に進歩すると考えられている。
 更に、巨大なコンピュータの中に、希望する人の意識をアップロードして、肉体が死んでもコンピュータ上で生き続けることができる時代がくると予想する。これを「マインドアップローディング」と呼ぶ。
 最終的には、全宇宙すべてがコンピュータになってしまうと予想されている。これを宇宙の「ウェイクアップ(覚醒)」と呼ぶ。このとき、コンピュータは、全宇宙の情報を管理し、人類に代わって宇宙を支配しているという。

■感想
 2045年、つまり今後30年のうちにコンピュータが人類全体の能力をはるかに超えてしまう「技術的特異点」を迎えるという。SFの世界だと思っていた世界を、多くの人が経験することになるという。ほとんどの職業は、コンピュータに置き換えられたとき、果たして人間はどのような暮らしをしているのだろうか?
 ホーキング博士をはじめとする多くの権威ある人たちがこぞって、人工知能の進化により人類が終焉すると警告している。技術の進歩は人類の発展に寄与するものと楽観視してばかりいられないのだ。

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