2012年1月26日木曜日

[書評]HAPPIER―幸福も成功も手にするシークレット・メソッド




現代人は、前の世代より明らかに物質的には豊かになっているのに、心理的には貧しくなっているという。
本書は、ハーバード大学で人気No.1の講義をまとめたもので、自分自身の内側に目を向ける機会を提供するとともに、我々がより幸せに生きるのを手助けする。

誰かが「良書とは、読む前と読んだ後で、人生の質が変わる本だ」といったが、
本書はまさしくそんな一冊だ。



■目次
1 幸せとは“究極の通貨”だ(問い中の問い、現在の利益と未来の利益、幸せの正体、究極の通貨、幸せになるための目標設定の仕方)
2 誰もが幸せになれる、仕事、学習、人間関係のあり方(「学ぶ幸せ」を習得する、「働く幸せ」を味わい尽くす方法、第8章 幸せな人間関係を築く秘訣)
3 永遠の至福に向けて(幸せブースター、つかの間の喜びを超えて、光り輝く勇気、自己の利益と思いやり、内なる賢者、ゆっくり生きても充分間に合う、幸せ革命、永遠の幸福へ―これがすべてです)

■4つの幸せのモデル
①快楽型:「現在の利益」と「未来の不利益」が混在すること。(例)ジャンクフード・バーガー
②出世競争型:「現在の不利益」と「未来の利益」が混在すること。(例)ベジタリアンバーガー
③悲観型:「現在の不利益」と「未来の不利益」が混在すること。(例)最悪のバーガー
④至福型:「現在の利益」と「将来の利益」をもたらしてくれること。(例)健康で美味しい理想的なバーガー

本書の中で、上記の幸せのモデルが紹介されている。
これは、退職決断のための「黄金基準」によく似ている。

我々は、当然ながら、上記④の「今も未来も幸せでいられる」選択をすべきだ。
楽しみながら学ぶことは、「現在の利益」を得ると同時に、未来の自分に役立つ「未来の利益」も見込むことができる。
信頼できる仲間と、ともに成長しあえる関係を築くことも、至福型モデルだと言える。

つまり、幸せを「喜びと意義の同時体験」だと定義することができる。

我々は、「自分に備わった能力を最大限に発揮しようと努めながら、挑戦的な活動に従事している」と感じるときに、深い充実感を得るという。

■幸せとは、”究極の通貨”
我々の究極の目的は、幸せの実現であるという。だから、富や名声は、幸せに貢献しうるものだが、本質的な価値を持たない。富や名声は、幸せに換算されて初めて価値を持つという。

しかしながら、我々は、時々、物質的な富が究極の目標の地位に押し上げられていることが起こりうる。ただし、それが悪いことではない。物質的繁栄は、個人だけでなく、社会全体の幸せにも貢献しうるし、経済的安定は、意義と喜びを見いだせない仕事などから、解放してくれる場合がある。
しかし、価値があるのは、お金自体ではなく、それが私たちにもたらせてくれる幸せな体験にある。

■感謝を表明する
「3 永遠の至福に向けて」の章に、「感謝日誌」を毎日つけることで、心理的にも肉体的にも、健康のレベルを大きく上昇させることができうることが記載されている。毎晩、最低5つ感謝すべきことを見つけることで、人生における些細なことでも、感謝の対象として見ることができ、喜べるものになるという。

■幸せの6つの秘訣
①自分に人間として生きる許可を与える
②幸せは、意義と喜びが交差する場所に横たわっている
③幸せは、社会的地位や預金残高などにではなく、心の状態に依存している。
④生活を単純にする
⑤心と体の密接な結びつきを忘れない
⑥可能なかぎり頻繁に感謝を表明する

■感想
学生の時、「人生の目的」に関する講義を受けた事がある。
それは、大学の授業ではなく、大学近くのマンションの一室で、密かに行われた講義だった。
たしか浄土真宗の人たちがやっていたように記憶している。
講義の内容は次のとおりだ。
多くの人は、人生の頂点に目標を定める。例えば、歌手や俳優になりたいとか、医者や弁護士になりたい、のように。
しかし、夢を叶えた後も、人生は続くことを認識しなければならない。
夢を叶えた後、人生の道を踏み外してしまう人が多いことを、何人もの有名人を挙げて説明していた。ドラックに溺れる者、事件やスキャンダルに巻き込まれ、転落人生を送る者。
たとえ人生の頂点に立つことができても、そこに居続けることはできない。
高い頂上に登るほど、急な下り坂を降りなければならないと。
それでは、「人生の目的」はどのように決めればよいのか?

「あと一週間の命だったら、何をするかを考え、そのことに人生を捧げなさい」

この講義に感銘を受け、私自身、この問いを何度も自問し、内なる声に耳を傾けてきた。
そのため、苦難も多かったが、迷いながらも、いろいろな事に挑戦できたように思う。この講義がなかったら、今の自分はなかったと言える。

オウム真理教など新興宗教も記憶に新しかった時代なので、勧誘されはしないか心配したが、そんな素振りは、全くなかった。

本書の中に「もしも私たちが、80歳のときに生まれ、徐々に18歳へと近づけるとしたら、私たちの人生は果てしなく幸せなものになるだろう」という言葉が出てくる。

きっと、その講演は、若い学生が人生に迷わないように生きてほしいという目的で行われたものだったと思う。

本書は、この講義に匹敵するほど、素晴らしい内容だ。
人生の道しるべを示してくれる作品だと思うので、将来に不安を抱えている若い人たちには、ぜひ読んでもらいたい。

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