2017年11月16日木曜日

誤訳訂正書をチェックする


定期的に、j-Platpatの「審査書類情報」から「誤訳訂正書」をチェックするようにしています。
「誤訳訂正書」は、出願後に、誤訳を訂正するために提出する書面で、この訂正書を見ていると、単なる訳抜け、誤記などのケアレスミスも見かけますが、自分でも間違えやすそうな誤訳もあり、参考にしています。

例えば、以下の誤訳訂正書では、“polarization element”「偏光要素」→「偏り要素」と訂正しています。



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【書類名】      誤訳訂正書
【提出日】      平成28年 9月 1日
【あて先】      特許庁長官殿 (審査官 前田 仁 殿)
【事件の表示】
  【出願番号】   特願2015-545960
【特許出願人】
  【識別番号】   505005049
  【氏名又は名称】 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
【代理人】
  【識別番号】   ●●●●●●
  【弁理士】
  【氏名又は名称】 ●●●●●●
【誤訳訂正1】
 【訂正対象書類名】 特許請求の範囲
 【訂正対象項目名】 全文
 【訂正方法】    変更
 【訂正の内容】
  【書類名】特許請求の範囲
  【請求項1】
 相手側コネクタを固定すると共に、相手側コネクタをコネクタハウジングから押し出すラッチであって、
 前記ラッチをコネクタハウジングに枢動可能に取り付けるように構成されたヒンジ部分と、
 前記ヒンジ部分の第1の側部から第1の方向に沿って延在するアーム部分と、
 前記ヒンジ部分の反対側の第2の側部から、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する、一対の個別の離間したヒンジアームと、
 前記アーム部分から、前記第1の方向とは異なる第4の方向に沿って延在すると共に、ユーザによって押されると前記ラッチを作動させるように適合された、作動部分と、を備え、
 前記ヒンジアームが、前記コネクタハウジングの底壁及び側壁を通って延在する一対の対応する離間したラッチ開口部を通って、前記相手側コネクタを押し出すように構成され、
 前記アーム部分と前記作動部分との間の作動角度が90°以下である、ラッチ。

【誤訳訂正2】
 【訂正対象書類名】 明細書
 【訂正対象項目名】 0026
 【訂正方法】    変更
 【訂正の内容】
  【0026】
 少なくとも一実施形態では、本体部分102は、その側面146上に配設された偏り要素144を更に含む。偏り要素144は、例えば、コネクタハウジング600の偏り開口部628(図16a~図16e)など、相手側コネクタの偏り開口部と係合するように構成される。偏り要素144は、挿入方向Aで延在する背の高い隆起148を含む。背の高い隆起148は、偏り開口部内に配設されるように構成される。偏り要素144及び偏り開口部はその組み合わせによって、相手側電気コネクタ1が間違って、即ち挿入方向Aを中心にして180°回転されて、相手側コネクタに嵌合されることを防ぐ。少なくとも一実施形態では、偏り要素144は、挿入方向Aで延在する背の低い隆起150を更に含む。背の低い隆起150は、例えばコネクタハウジング600の内表面652(図16a~

P.2
図16e)など、相手側コネクタの表面を摩擦係合するように構成される。少なくとも一態様では、これにより、相手側電気コネクタ1を相手側コネクタにしっかりと取り付けることが可能になり、別個のラッチ留め/押出し機構がないときに特に有用である。偏り要素144は、本体部分102のどちら側の任意の好適な位置にあってもよい。

【誤訳訂正3】
 【訂正対象書類名】 明細書
 【訂正対象項目名】 0060
 【訂正方法】    変更
 【訂正の内容】
  【0060】
 少なくとも一実施形態では、側壁606は、側壁606の中央に偏り開口部628を含む。偏り開口部628は、例えば、相手側電気コネクタ1のコネクタハウジング100の偏り要素144など、相手側コネクタの偏り要素の一部を受け入れるように構成される。偏り開口部628及び偏り要素はその組み合わせによって、相手側電気コネクタが間違って、即ち挿入方向Aを中心にして180°回転させて、電気コネクタ2に嵌合されるのを防止する。少なくとも一実施形態では、側壁606は、偏り開口部628内へと延在する一対の係合要素650を含む。係合要素650は、例えば相手側電気コネクタ1のコネクタハウジング100の偏り要素144など、相手側コネクタの偏り要素と摩擦係合するように構成された内表面652を含む。この例では、内表面652は、偏り要素144のより低い隆起150と摩擦係合するように構成される。少なくとも一態様では、これにより、相手側コネクタを電気コネクタ2にしっかりと取り付けることが可能になり、これは、別個のラッチ留め/押出し機構がないときに特に有用である。少なくとも一実施形態では、側壁608は、側壁608の内表面608aから延在する係合斜面630を含む。係合斜面630は、例えば相手側電気コネクタ1など、相手側コネクタと係合するように構成される。少なくとも一態様では、相手側電気コネクタ1をコネクタハウジング600に挿入する間、側壁608上の係合斜面630は、相手側電気コネクタ1を側壁606の方へ導いて、偏り要素144のより低い隆起150が側壁606上の係合要素650の内表面652と適切に摩擦係合することを確保する。偏り開口部628、係合要素650、及び係合斜面630は、どちらかの側壁上の、任意の好適な位置にあってもよい。
【訂正の理由等】
(訂正の理由1)
 特許請求の範囲における旧請求項1~9を削除し、旧請求項10を請求項1といたしました。
(訂正の理由2)
 原文(国際公開における明細書。以下、同様)における英語“polarization element”を「偏光素子」と誤訳しておりました。この部分は、訂正前の本段落の「偏光素子144及び偏光開口部はその組み合わせによって、相手側電気コネクタ1が間違って、即ち挿入方向Aを中心にして180°回転されて、相手側コネクタに嵌合されることを防ぐ。」と
いう記載からも明らかなように、形状を非対称とすることで誤組み付けを防止するための要素であるため、形状に偏りを持たせるための要素であることが明かです。従って、ここでは「偏り要素」と訂正しました。
(訂正の理由3)
 「訂正の理由2」と同様の理由により、形状に偏りを持たせて非対称とするための開口部として、”polarization opening”を「偏光開口部」から「偏り開口部」と訂正しました。
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このように誤記になった理由も記載されているので、誤訳訂正書を見ているだけでも勉強になります。

ひとつ問題なのは、特許情報プラットフォームで誤訳訂正書が提出された案件を抽出することはできないので、一件一件、誤訳訂正書が提出されているかを確認する必要があるため、非常に時間がかかってしまうことです(私は別の業務の関係上、拒絶査定不服審判の審決書を読んでいるので、誤訳訂正書が提出された案件を知ることができ、それだけ調べていますが・・・)。

まずは自身が担当する企業の公報をチェックするとよいと思います。

よろしければ、ポッチッとお願いします。

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