2016年9月8日木曜日

気づき⇒改善

この夏、マシーンジムでの筋トレの頻度を落とし、代わりに週2回ほどの頻度でプールで泳ぎました。水泳は、小学生の頃に数年間水泳教室に通った程度の能力しかありませんが、ゆっくりと息継ぎをしながらなんとか気持ちよく泳ぐことはできます。

昼間のプールでは、大半は年配の方が水中ウォーキングをしていますが、ある日、若い小柄な女性が上級者用の往復レーンをまるで人魚のように泳ぐ姿に目を奪われました。本当に無駄のない動きで泳いでいました。

自分との違いは何なのかと疑問を持ちました。
帰宅後、動画サイトで、「アスリート解体新書 (21)水泳/クロール・平泳ぎ ~水の抵抗を味方に変える~」という動画を発見しました。

  • 水の抵抗を減らすため、水面に平行な姿勢をとること
  • クロールでは、85%は手の掻きで推進力を生み出す
  • クロールのストロークは、エントリー、キャッチ、スカーリングプル、フィニッシュに分けられ、そのうちキャッチとフィニッシュを速くする
  • 水を斜め(45度以内)に押し出す
  • クロールでは、キックは膝から下を小刻みに動かす
  • 平泳ぎでは、主にキックが推進力を生み、足引をできるだけ腰の内側で行い、素早くキック
  • 平泳ぎでは、水面に平行な姿勢を長くとる

この内容はまさに目からウロコ。
次の日、さっそく実践してみました。 その後も、継続してプールで泳ぎ続け(この夏だけで30回以上)、ようやく泳ぎのコツみたいなものが分かった気がします。

 翻訳においても、この「気付き」がとても大切だと思います。 フリーランスとして仕事をしていてもクライアントからフィードバックをもらうことはほぼ皆無。仕事が来ているからおそらくこれでいいんだろうなくらいで、本当に自分の実力がどの程度なのか客観的に知ることはなかなかできません。 つまり、フリーランスの場合、自分自身で一流の翻訳者との違いに「気づき」、それを克服していく必要があるのです。 さらに難しいことに、公開されている無数の特許公報の中から、どれが一流かどうか、初心者の頃はなかなか判断がつかないかもしれません。 この業界で慢性的に一流の翻訳者が不足していると言われている理由は、このあたりにあるのかもしれません。

フィットネス業界でもパーソナルトレーナーがブームになっていますが、 こうした気づきを与えられる翻訳のパーソナルトレーナーも必要なのかもしれません。

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2016年9月2日金曜日

[書評] 科学は歴史をどう変えてきたか: その力・証拠・情熱



■目次
はじめに 淡いブルーの点
1 宇宙―そこには何があるのか
2 物質―世界は何でできているのか
3 生命―私たちはどうやってここまで来たか
4 エネルギー―無限のエネルギーを手に入れられるのか
5 人体―生命の神秘とは
6 脳―私たちとは
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本書は、BBCのドキュメンタリーと連携して作成された書籍であり、古代から現代に至るまで科学の歴史を、カラーの図表や写真を用いて分かりやすく説明しています。内容的にも難しすぎず、易しすぎず、中学生や高校生の教科書としても適していますが、幅広い分野の知識を得たい特許翻訳者にとっても役立つおすすめの一冊です。

通常の教科書と違って本書が面白かったのは偉大な科学者の性格にも触れている点。例えば、ニュートンは、「気難しく内向的な人間」であり、「木からリンゴが落ちるのを観て、その同じ力が月にも働いている」と思ったという有名な話は、ニュートン自身が晩年に作り上げた全くのフィクションであったようで、こうしたイヤミな一面にも触れています。科学者の人間的な部分を描くことで、科学に疎い一般の読者(視聴者)にも、感情移入しやすくなるようにされています。

また、本書では、主にヨーロッパにおける戦争や革命と、発明との関係にも言及されています。その発明がその当時、どのような意義を持ったかを知ることができます。

最後に、本書が素晴らしかったのが、翻訳のクオリティの高さです。翻訳書であることを感じさせないほど読みやすくなっています。翻訳者としても、こうした良質な科学文献を日本人に伝えるという意義のある作業に関われることはとても充実感があることだろうと感じます。

 なお、BBCのドキュメンタリー番組は、"The Story Of Science"とネットで検索すると、見つかります。





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2016年8月27日土曜日

原稿のチェック(校正)方法

一度翻訳した原稿を納品する前に、訳抜け、誤訳をチェックする必要がありますが、以前の記事『仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する』にも記載した通り、提出期限までこの作業を繰り返してしまい、多大な労力と時間が費やされることになります。

そういうわけで、最近は、自分なりにシンプルな原稿のチェック(校正)方法を確立しています。
具体的には、訳文と原文をそれぞれコピーし(Tradosの場合では左半分に原文、右半分に訳文が対比されてコピーされたもの)、それを青色のボールペンで原文と訳文をそれぞれ単語毎(あるいは文節毎)下線を引いていきます。訳抜け、誤訳等を発見したときは、赤色のボールペンを使用して、下線やメモを残します。最後に、そのメモを見ながら、パソコン上で修正していき、チャックが完了となります。

その際、使用するボールペンとしては、非常に滑らかな書き心地の『多機能ペン ジェットストリーム 4&1』を重宝しています。

  • 多機能ペン ジェットストリーム 4&1



しかし、チェック作業の多くを青色のボールペンで行うため、どうしても青色のインクの減りが早くなってしまいます。

そこで、最近、はじめて万年筆を使い始めました。
文房具店で実際にいろいろ試し書きしましたが、なぜか安価な『パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-LF 細字 ブルー』が一番書きやすかったので購入しました。おそらく万年筆では珍しく、三角グリップを採用しており、握りやすくなっているからだと思います。また、このカクノのペン先は、パイロットの万年筆の中でも高価なタイプ『コクーン』や『プレラ』と同一のようなので、品質的にも問題ないようです。
万年筆は、ボールペンよりも少ない力で書けるので、満足しています。


  • パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-LF 細字 ブルー






2016年8月16日火曜日

[PC周辺機器] トラックボール


トラックボールは、一度使ったら、マウスを使うのが嫌になってしまうほど快適です。マウスからトラックボールに切り替えて、もう5年以上経ちますが、たまにマウスを使うと、どうして無駄に手を動かさないといけないのかと、イライラしますね。
トラックボールは、手の位置を固定したまま、ただ指だけを動かせばいいので、腱鞘炎になる心配もありません。また、机の上で、マウスを動かすスペースを設ける必要もなく、省スペースにも有効です。特に、マウスの移動が大きくなる大画面やデュアルモニターを用いている場合に、有効です。

使用前は、使い慣れるのが大変なんじゃないかと思っていましたが、それほど難しいものではなく、ほんの数時間ですぐに慣れました。

私は、Windowsだけでなく、MacのPCでもこのトラックボールを使用しています。つまり、MacのMagic Trackpadより使いやすいと思っています。おすすめです。


  • LOGICOOL ワイヤレストラックボール M570t




  • Apple Magic Trackpad MC380J/A

2016年7月27日水曜日

[書評] 職業としての小説家 村上春樹著



本書は、村上春樹が小説家について語った本だが、小説家と対比して、「翻訳者」について考えると面白い。

小説家との違いについて

まず最初に、著者は「作家というのは基本的にエゴイスティックな人種だし、やはりプライドやライバル意識の強い人が多い。」と述べています。たしかに人と違ったオリジナリティのあるアイディアを提供できる人でないと小説家には向かないですね。そういう意味では、発明者に似ているかもしれません。

一方、翻訳者について言えば、個人的には、割りと素直で従順な人で、間違いを自分のせいだと考えてしまう人が向いているように思います。逆に、原文の誤りや解釈について、自分が正しいことを延々と主張する人は向いていないように思いますね。

次に、著者は、小説は誰でも書こうと思えば書けるものであり、実際に歌手や画家など異業種から来た多くの新人作家が小説を書いて、それが評判となることもあるが、二十年、三十年にもわたって小説家として活躍することは難しいと述べています。

これについて言えば、お笑い芸人である又吉直樹さんが書いた「火花」が芥川賞を受賞したことからも納得できますね。ただし、継続して面白い小説を書き続けられるかが小説家としての本当の資質であるようで、今後が勝負ですね。

一方、特許翻訳者は、日本語力と外国語力を含む語学力、論理的思考力、細部を対する注意力、技術理解力など様々な能力が求められ、翻訳者として継続していくことも難しいですが、それ以上に新規参入していくことが難しいと思います。翻訳会社が設けているトライアルが、通常の明細書より難易度が高いものに設定していることからも参入障壁を高くしているように思います。
小説家との共通点について
「長期間にわたる孤独な作業を支える強靭な忍耐力」は、小説家と同じように、フリーランスの翻訳者にも必要となります。普段は、家に閉じこもって仕事をするため、ほとんどしゃべることがない日が続くことになります。長期的にこうした生活を続けるためにも、社会との接点を見つける努力も必要だと思います。

■感想
 以前は、村上春樹氏の小説をよく読んでいましたが、最近は、本書のようなエッセイを好んで読みます。30年以上続けた作家としての生活スタイルは、とても参考になります。著者は翻訳者としても活躍しているので、いつか「職業としての翻訳家」を書いてもらいたいですね。 

 本書の中で、著者は、神宮球場でヒルトンのいう打者が二塁打を打ったのを見たとき、突然、小説を書こうと決心したようです。私自身もこうした直感を大切にしたいと思っています。いつか、こうした啓示のような出来事があったときは、躊躇わず、前に踏み出したいと思っています。


そして、処女作である「風の歌を聴け」を書き上げたあと、自分で読み返した際、その内容があまりに面白くなかったので、一度英文に翻訳し、さらに、それを日本語に翻訳してみたことを語っています。この方法により、独特の新しい文体が生まれ、結果的に「群像」の新人賞を獲得し、小説家としての道が開かれたそうです。彼の文章が翻訳調といわれる所以だそうです。

私は、今のところ特許翻訳のみを対象としていますが、いつかノンフィクション、小説などを対象とする翻訳もしてみたいです。また、今はまったく思いませんが、突然の直感で、小説を書き始めることもありかもしれません。



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2016年7月22日金曜日

[筋トレの日々] 肉体改造の一年の成果

去年の今ごろからスポーツジムに通い始め、ちょうど一年が経過しました。長期離脱することなく、継続的(平均週3回以上)に通うことができ、肉体的にもかなり若々しく、健康的な状態となりました。この一年、筋力トレーニングだけでなく、ヨガや水泳も行い、全身の筋肉を満遍なく鍛えました。
使われていない筋肉はぶよぶよとした柔らかい状態(英語ではflabbyというそうですが)になるそうですが、一年前に比べて、今はほぼ引き締まった身体になりました。また仕事中の集中力も向上したように思います。

プロテインも継続して飲み続けています。いろいろな味を試しましたが、甘さ控えめのエスプレッソ味が一番飽きのこないですね。

DNS WHEY PROTEIN G+ (ホエイプロテインG+) エスプレッソ風味 1000g


最近では、さらに別のスポーツにトライしてみようと、合気道の道場に体験レッスンに2回ほど行きました。意外にも、先生を含め、生徒も半数以上が女性で、それほど激しい運動ではないですが、受け身のため、前回りや後ろ回しが必要となり、目が回ってしまうのが問題でした。というのも、スポーツジムでは自分のペースでただリフレッシュのために行っていましたが、合気道では先生の指導の下、皆のペースで進み、またリフレッシュせず、ただ目が回ってしまうので、その後、仕事を再開できないからです。ということで、合気道は継続するかはまだ検討中です。

いずれにしろ翻訳業を行う限り、運動も両立していきたいですね。

最後に最近よく見る、筋トレの動画サイトを紹介しておきます。
Kanekin Fitness
かねきんさんのポジティブなメッセージにより筋トレのモニベーションがアップします。

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2016年7月11日月曜日

[おすすめ書籍] 日本人のための日本語文法入門 原沢 伊都夫 著

翻訳者としてより高いレベルを目指すために、日本語の文法を学ぶことが重要だと思います。これは、和訳において、日本語をより正確に表現するためだけでなく、英訳において、日本語を正確に汲み取るためにも必須だと思います。

そこで、入門書として本書が非常に分かりやすくおすすめです。


  • 日本語に主語は重要か? 「は」と「が」はどこが違う?
「が」は、動作の主体(いわゆる「主語」)を表す。
それに対し、「は」は、以下のように、話者によって文の主題を提示する。

  1. 母親書籍で翻訳原稿を作成した。
  2. 書斎では、母親が翻訳原稿を作成した。(「書斎」について言えば)
  3. 翻訳原稿母親が書斎で作成した。(「翻訳原稿」について言えば)
以上のように、同じ事実示しながら、「は」を用いて、異なる主題を提示していることがわかります。これを、「主題−解説」の構造と呼ばれています。さらに、以下のようにさまざまな格助詞(ガ格、ヲ格、二格、デ格、ト格、へ格、ヨリ格、カラ格、マデ格)を主題化することが可能です。
  1. 日曜日母親が書斎で翻訳原稿を作成した。(二格:日曜日母親母親が書斎で翻訳原稿を作成した。)
  2. 駅へは母親が迎えに行った。(へ格:母親が駅へ迎えに行った)
  3. 母親よりは私のほうが背が高い。(ヨリ格:母親より私のほうが背が高い。)
  4. その蛇口は水が出ない。(カラ格:その蛇口から水がでない)
  5. 駅までは徒歩で5分かかる。(マデ格:駅まで徒歩で5分かかる。)

  • なぜ自動詞が多用されるのか? 受身文に秘められた日本人の世界観とは?

本来、自動詞は、「雨が降る」などの自然現象を表すときによく使われ(自然中心)、一方、他動詞は「私が衣服を洗濯する」など人間の行動が起点となり、物事を引き起こすことを表すときに使われます(人間中心)。
しかし、日本語では、英語と比べても、人間に関連することも自動詞で表現することが多いそうです。例えば、
私は驚いた。 I am surprised.
犯人が捕まった。 A criminal was caught.
富士山が見える。 I see Mt. Fuji.
君の気持ちがわかる。 I understand your feeling.

つまり、日本語では、人間の活動も自然界の流れの一つとしてとらえる傾向があるようです。

自動詞と他動詞の見分け方としては、
 自動詞は、「ヲ格成分を持たない」もの
 他動詞は、「ヲ格成分を持つ」もの
と区別できますが、但し、例外として、「起点」と「通過点」を表すヲ格は除外されます。
 起点をヲ格とする移動動詞としては、「出る」「出発する」「離れる」などが挙げられ、
 通過点をヲ格とする移動動詞としては、「歩く」「渡る」「走る」などが挙げられます。


  • 主節と従属節からなる複文に表れる相対テンス

例文)日本を来るとき、同僚が送別会を開いてくれた

英語の場合、「時制の一致」という考えのもと、以下のように表現されます。

When I came to Japan, my colleagues held my party.

そのため、日本語を学ぶ外国人は、
「日本を来たとき、同僚がパーティーを開いてくれた。」とすべきでは?と質問してくるそうです。

これを説明する際に用いられるのが、相対テンスという考え方。

これは、主節の事態が起こっているとき(つまり、「同僚が送別会を開いてくれた」とき)を基準にして、従属節の事態がいつ起こっているかによって、テンスが変わるという考え方です。

この例文では、従属節の「日本に来るとき」は、主節の「送別会を開いてくれた」ときよりも、後に起きる事態なので、ル形が使われるそうです。

一方、日本に同僚がいて、日本に着いたとき、日本で同僚がパーティーを開いてくれた場合は、タ形になるそうです。


■感想
英語の文法が昔から好きで、パズルを解くようで面白いと感じていました。同様に本書を読むと、外国人が日本語を学ぶ際の日本語文法も、論理的な規則があって、とても面白いものでした。本書は英語の文法との違いを中心に説明しているので、翻訳者にとっても有益な内容だと思いました。







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