2016年10月15日土曜日

デジャブ


 はじめてこのジャズバーを訪れたとき、以前来たことがあるような不思議な感覚、いわゆるデジャブ(既視感:実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じること)が起こりました。

皆さん、分かりますか?

ヒントは、この時期、毎年話題にのぼる作家の、ある小説。

 そう、村上春樹さんの「ノルウェイの森」という小説の中で登場するジャズバーは、この新宿にあるDUGという店をモチーフにしたそうです。

 この作品は、高校生のころはじめて読み、それから何回か読み返していたので、記憶の片隅に残っていたんだと思います。また、小説を読んだあと、だいぶ経って記憶がなくなったあと、映画化された作品を見ました。そのとき、忘れてしまった内容と、記憶している内容があるのに気づき、面白く感じました。何を忘れ、何を記憶するかは、おそらく当時自分が重要だと思ったことと、そうでないことを基準にしているように思うからです。

 彼の作品は、40カ国以上の言語に翻訳され、世界中に多くのファンを獲得しているので、近年、急増する訪日外国人旅行者の中には、この店を訪れて私と同じように感じている方もいるかもしれません。

 ところで、特許翻訳をしていると、次から次に新しい技術分野(コンピュータセキュリティから付け睫毛取付具まで)の発明に突き当たり、その都度、関連する書籍を読み、背景技術を勉強しますが、終わったら、すぐに忘れてしまいます。特に書面だけで発明を理解するのは大変な場合もあります。あまり馴染みがない「付け睫毛取付具」を翻訳していたときは、実際にお店に行き、関連する商品を探しましたが、結局、同じような商品は見つかりませんでした。特許発明は、新規性、すなわち、従来公開されていた技術とは異なるものである必要があるため、実際に商品化されるのは、出願されてから数年後という場合もあります。発明の内容をしっかり理解することを努めていれば、いつか製品化された商品を目にしたときに、デジャブが起きるかもしれません。


■Norwegian Wood (Vintage International) Kindle版

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2016年10月11日火曜日

[講演]柴田元幸先生、翻訳を語る

先日、柴田元幸先生の講演に参加しました。

柴田元幸先生は、東京大学文学部の名誉教授であり、翻訳業界ではとても有名な方で、文芸翻訳になじみのない私でも、村上春樹さんとの共著「翻訳夜話」などで名前は存じておりました。

目からウロコが落ちる、面白い内容だったので、ここでシェアします。




  • 翻訳はあくまで副業で、好きなものしか翻訳しない
  • 主に電子辞書(特に信頼度の高いリーダーズ、ランダムハウス)を用いて、ノートに手書きで翻訳をしている
  • Googleで表現をチェックしている
  • 変な日本語が入ってこないように、テレビは持っていない
  • 翻訳者は、読者の代表であり、作者の代弁者ではない
  • 翻訳していて「分からない箇所」に突き当たったら、とりあえず訳して先に進む。後から内容の理解が進むと、「分からない箇所」も明確になるから
  • 小説の翻訳では、「意味」よりも「快楽」を伝えることが重要
  • 例えば、ダジャレは、笑いが等価になるように訳せばよい
  • 小説の中での人称代名詞(私、僕、俺など)の決め方は、登場人物の関係性で決めることが多い
  • 小説の翻訳では、一文の翻訳で正しく伝わらなくても、文章全体で内容が伝わればよい
  • 英語では一文が長い場合、複数の文に分けて翻訳してもよい
  • 賞味期限の短い流行のコトバは使わない
  • 昔の英文小説では、「過去形」を使用したものが多かったが、現在は、「現在形」を使用することが多いのは、「先の見えない状況」を表すため



このような翻訳の講演会に参加するのは初めてでしたが、とても刺激を受けました。翻訳道も、非常に奥が深く、極めるのは長く険しい道のりだと感じました。

■翻訳教室 柴田元幸








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2016年9月26日月曜日

ボルダリング

先日、近所にあるクライミングジムに行ってきました。
クライミングは、2020年の東京オリンピックでは正式種目にも選ばれ、今後ますます注目される競技です。
ボルダリングはこのクライミングの一種で、命綱を使わずに壁を登るタイプのクライミングです。


登るコースは、人工壁に取り付けられたホールド付近に貼られた様々な色のテープにより、難易度(8〜1級、1段、2段)が決められています。

料金は以下のとおりです。
■料金
  • 一日使用料金¥1,835
  • レンタルシューズ¥215
  • レンタルチョークバック¥105
週末ということもあり、家族連れや女性も結構いました。
クライミングは、いかに指や腕の力を使わずに、重心の位置を考えながらバランスを取りながら登ることが重要です。そのため、男性に比べ腕力が劣る女性や子供でも、軽々と登っている方もいます。私は、10年以上前に一度経験したことがあり、 その時は、腕力で登るものと思ってひどく疲れてしまったことも覚えていたので、今回は、その経験を踏まえて、足をうまく使用して楽しく登ることができました。帰宅後、動画でボルダリングのコツを学びました。




  • 腕を伸ばして、猿のようにぶら下がる
  • 腕の下に重心が来るように、腕に対して足を左右対称に配置する。
  • 足(太もも)を腕よりも3〜4倍くらい優先的に使用する
  • オポジションやカウンターバランスを使用して効率的に移動する。
以上のコツを踏まえて、次回はより難易度の高いコースを挑戦したいと思います。インナーマッスルを鍛えたり、身体のバランス感覚を養うのにとても有効なので、おすすめです。

ところで、翻訳においても、「バランス」が重要だと思います。
例えば、特許翻訳における直訳か意訳かのバランスが挙げられます。
特許翻訳においては、先の外国出願を基礎として、優先権を主張して各国に出願するため、原出願から「過不足なく」翻訳することが求められます。そのため、直訳的な翻訳になりがちですが、このような翻訳では訳文のみを見る第三者にとって、読みにくく、分かりにくい文章になりがちです。そのため「原文に何も足さない、原文から何も引かない」というルールを厳守しながら、できるだけ分かりやすい翻訳を作成する必要があります。この点については、後日書きたいと思っています。

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2016年9月23日金曜日

JTFほんやく検定

以前の投稿で、『フリーランス翻訳者は、業務の中で客観的なフィードバックを受けることが難しい』と記載しましたが、一つの客観的な指標を得る方法として、JTFほんやく検定があります。
米国人の元エンジニアの方がリーマンショック後、この検定に合格し、来日して翻訳者としてのキャリアをスタートしたそうで、ある程度国際的に通用する検定のようです。

ただし、この試験も、どの分野の何級に合格したかどうかが分かるだけで、翻訳文のどこがどう間違っていたかを知ることはできません。そのため、受験料を払って証明書を得る必要がなければ、公式問題集を購入し、自分で問題を解いて、その解説と見比べて勉強した方がよいと思います。



私は、この問題集を買った当初『特許』のみを解いていましたが、最近、情報処理など他の分野も解いてみたら、とても勉強になりました。翻訳者は、専門性だけでなく、『引き出しの多さ』も必要なので、別の分野を勉強することも有益です。


2016年9月18日日曜日

[書評] 昭和史 戦後篇 1945-1989 半藤 一利 (著)

  • 目次 


天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■感想 
本書を読むと、戦後の日本は、 戦前、戦時中の『昭和史 1926-1945』とはまったく違う時代となったことが認識できます。福沢諭吉が江戸時代と明治時代というまったく異なる2つの時代を半分ずつ生きたことを「一身にして二生を経た」といったようですが、この時代をまたがって生きた人たちも同様に感じたことだろうと思います。
 戦後の日本人は、悲惨な戦争をもう二度と繰り返したくないという思いで平和な国家を志向する。そのため、戦争責任者については弾劾するが、天皇陛下には一切の戦争責任が負わせないように画策する。日本人からこのような趣旨の手紙を多く受け取ったマッカーサーは、早くから天皇陛下を裁判にかけないことを決めていたようだ。日本人にとって天皇という存在の意味を考えさせられる。

それと同時に、日本は世界一の経済大国まで登りつめる。これは、日本人の勤勉さにもよるが、数々の幸運が重なった結果であると分かる。朝鮮戦争が勃発すると日本経済は前例のない特需に湧き、その中でソニーやトヨタなどの世界的企業が誕生した。

また、本書を読むと、これからの日本のあるべき姿について考えさせられる。北朝鮮のミサイル問題、中国との尖閣問題など東アジアの緊張が高まるにつれ、憲法改正、武装化の議論が持ち上がるが、これらの問題は日本が戦後歩んできた歴史を踏まえて考えることが大事だと感じます。「戦争のない世界を」という究極の理想を志向して創案された憲法9条により、日本という国が世界の国々から道徳的な国家として尊敬の念を得られてきたという側面があると思います。

 憲法9条 条文

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。


なお本書について、詳しい内容は、
社会派ブロガーChikirinの日記『昭和史 戦後編』を読んで 
にまとめられています。

■昭和史 戦後篇 1945-1989

2016年9月12日月曜日

[おすすめ]日本語文法ハンドブック


 本書がおそらく日本語文法の定番の本だと思います。恥ずかしながら、企業で知財業務をしていたときは、知りませんでした。しかし、プロの翻訳家やライターになるには、必須の書かもしれません。以前書いた『日本人のための日本語文法入門』は、気軽な読み物としておすすめですが、本書は、ボリュウムがあり、文法で分からないことがでてきたときに、その都度確認するための座右の書だと思います。

欲を言えば、例文の英訳が載っていれば、翻訳者にとってさらに有益な書籍になるのですが・・・。

■初級を教える人のための日本語文法ハンドブック

■中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック

2016年9月8日木曜日

気づき⇒改善

この夏、マシーンジムでの筋トレの頻度を落とし、代わりに週2回ほどの頻度でプールで泳ぎました。水泳は、小学生の頃に数年間水泳教室に通った程度の能力しかありませんが、ゆっくりと息継ぎをしながらなんとか気持ちよく泳ぐことはできます。

昼間のプールでは、大半は年配の方が水中ウォーキングをしていますが、ある日、若い小柄な女性が上級者用の往復レーンをまるで人魚のように泳ぐ姿に目を奪われました。本当に無駄のない動きで泳いでいました。

自分との違いは何なのかと疑問を持ちました。
帰宅後、動画サイトで、「アスリート解体新書 (21)水泳/クロール・平泳ぎ ~水の抵抗を味方に変える~」という動画を発見しました。

  • 水の抵抗を減らすため、水面に平行な姿勢をとること
  • クロールでは、85%は手の掻きで推進力を生み出す
  • クロールのストロークは、エントリー、キャッチ、スカーリングプル、フィニッシュに分けられ、そのうちキャッチとフィニッシュを速くする
  • 水を斜め(45度以内)に押し出す
  • クロールでは、キックは膝から下を小刻みに動かす
  • 平泳ぎでは、主にキックが推進力を生み、足引をできるだけ腰の内側で行い、素早くキック
  • 平泳ぎでは、水面に平行な姿勢を長くとる

この内容はまさに目からウロコ。
次の日、さっそく実践してみました。 その後も、継続してプールで泳ぎ続け(この夏だけで30回以上)、ようやく泳ぎのコツみたいなものが分かった気がします。

 翻訳においても、この「気付き」がとても大切だと思います。 フリーランスとして仕事をしていてもクライアントからフィードバックをもらうことはほぼ皆無。仕事が来ているからおそらくこれでいいんだろうなくらいで、本当に自分の実力がどの程度なのか客観的に知ることはなかなかできません。 つまり、フリーランスの場合、自分自身で一流の翻訳者との違いに「気づき」、それを克服していく必要があるのです。 さらに難しいことに、公開されている無数の特許公報の中から、どれが一流かどうか、初心者の頃はなかなか判断がつかないかもしれません。 この業界で慢性的に一流の翻訳者が不足していると言われている理由は、このあたりにあるのかもしれません。

フィットネス業界でもパーソナルトレーナーがブームになっていますが、 こうした気づきを与えられる翻訳のパーソナルトレーナーも必要なのかもしれません。

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