2016年9月18日日曜日

[書評] 昭和史 戦後篇 1945-1989 半藤 一利 (著)

  • 目次 


天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■感想 
本書を読むと、戦後の日本は、 戦前、戦時中の『昭和史 1926-1945』とはまったく違う時代となったことが認識できます。福沢諭吉が江戸時代と明治時代というまったく異なる2つの時代を半分ずつ生きたことを「一身にして二生を経た」といったようですが、この時代をまたがって生きた人たちも同様に感じたことだろうと思います。
 戦後の日本人は、悲惨な戦争をもう二度と繰り返したくないという思いで平和な国家を志向する。そのため、戦争責任者については弾劾するが、天皇陛下には一切の戦争責任が負わせないように画策する。日本人からこのような趣旨の手紙を多く受け取ったマッカーサーは、早くから天皇陛下を裁判にかけないことを決めていたようだ。日本人にとって天皇という存在の意味を考えさせられる。

それと同時に、日本は世界一の経済大国まで登りつめる。これは、日本人の勤勉さにもよるが、数々の幸運が重なった結果であると分かる。朝鮮戦争が勃発すると日本経済は前例のない特需に湧き、その中でソニーやトヨタなどの世界的企業が誕生した。

また、本書を読むと、これからの日本のあるべき姿について考えさせられる。北朝鮮のミサイル問題、中国との尖閣問題など東アジアの緊張が高まるにつれ、憲法改正、武装化の議論が持ち上がるが、これらの問題は日本が戦後歩んできた歴史を踏まえて考えることが大事だと感じます。「戦争のない世界を」という究極の理想を志向して創案された憲法9条により、日本という国が世界の国々から道徳的な国家として尊敬の念を得られてきたという側面があると思います。

 憲法9条 条文

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。


なお本書について、詳しい内容は、
社会派ブロガーChikirinの日記『昭和史 戦後編』を読んで 
にまとめられています。

■昭和史 戦後篇 1945-1989

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿

[書評] 投資家が「お金」よりも大切にしていること 藤野英人

目次  第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目(8割の学生が「お金儲け=悪」日本人は世界一ケチな民族 ほか) 第2章 日本をダメにする「清貧の思想」(バットマンはなぜ「かっこいい」のか?日本のヒーローは…公務員 ほか) 第3章 人は、ただ生き...