2016年9月23日金曜日

JTFほんやく検定

以前の投稿で、『フリーランス翻訳者は、業務の中で客観的なフィードバックを受けることが難しい』と記載しましたが、一つの客観的な指標を得る方法として、JTFほんやく検定があります。
米国人の元エンジニアの方がリーマンショック後、この検定に合格し、来日して翻訳者としてのキャリアをスタートしたそうで、ある程度国際的に通用する検定のようです。

ただし、この試験も、どの分野の何級に合格したかどうかが分かるだけで、翻訳文のどこがどう間違っていたかを知ることはできません。そのため、受験料を払って証明書を得る必要がなければ、公式問題集を購入し、自分で問題を解いて、その解説と見比べて勉強した方がよいと思います。



私は、この問題集を買った当初『特許』のみを解いていましたが、最近、情報処理など他の分野も解いてみたら、とても勉強になりました。翻訳者は、専門性だけでなく、『引き出しの多さ』も必要なので、別の分野を勉強することも有益です。


2016年9月18日日曜日

[書評] 昭和史 戦後篇 1945-1989 半藤 一利 (著)

  • 目次 


天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話
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■感想 
本書を読むと、戦後の日本は、 戦前、戦時中の『昭和史 1926-1945』とはまったく違う時代となったことが認識できます。福沢諭吉が江戸時代と明治時代というまったく異なる2つの時代を半分ずつ生きたことを「一身にして二生を経た」といったようですが、この時代をまたがって生きた人たちも同様に感じたことだろうと思います。
 戦後の日本人は、悲惨な戦争をもう二度と繰り返したくないという思いで平和な国家を志向する。そのため、戦争責任者については弾劾するが、天皇陛下には一切の戦争責任が負わせないように画策する。日本人からこのような趣旨の手紙を多く受け取ったマッカーサーは、早くから天皇陛下を裁判にかけないことを決めていたようだ。日本人にとって天皇という存在の意味を考えさせられる。

それと同時に、日本は世界一の経済大国まで登りつめる。これは、日本人の勤勉さにもよるが、数々の幸運が重なった結果であると分かる。朝鮮戦争が勃発すると日本経済は前例のない特需に湧き、その中でソニーやトヨタなどの世界的企業が誕生した。

また、本書を読むと、これからの日本のあるべき姿について考えさせられる。北朝鮮のミサイル問題、中国との尖閣問題など東アジアの緊張が高まるにつれ、憲法改正、武装化の議論が持ち上がるが、これらの問題は日本が戦後歩んできた歴史を踏まえて考えることが大事だと感じます。「戦争のない世界を」という究極の理想を志向して創案された憲法9条により、日本という国が世界の国々から道徳的な国家として尊敬の念を得られてきたという側面があると思います。

 憲法9条 条文

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。


なお本書について、詳しい内容は、
社会派ブロガーChikirinの日記『昭和史 戦後編』を読んで 
にまとめられています。

■昭和史 戦後篇 1945-1989

2016年9月12日月曜日

[おすすめ]日本語文法ハンドブック


 本書がおそらく日本語文法の定番の本だと思います。恥ずかしながら、企業で知財業務をしていたときは、知りませんでした。しかし、プロの翻訳家やライターになるには、必須の書かもしれません。以前書いた『日本人のための日本語文法入門』は、気軽な読み物としておすすめですが、本書は、ボリュウムがあり、文法で分からないことがでてきたときに、その都度確認するための座右の書だと思います。

欲を言えば、例文の英訳が載っていれば、翻訳者にとってさらに有益な書籍になるのですが・・・。

■初級を教える人のための日本語文法ハンドブック

■中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック

2016年9月8日木曜日

気づき⇒改善

この夏、マシーンジムでの筋トレの頻度を落とし、代わりに週2回ほどの頻度でプールで泳ぎました。水泳は、小学生の頃に数年間水泳教室に通った程度の能力しかありませんが、ゆっくりと息継ぎをしながらなんとか気持ちよく泳ぐことはできます。

昼間のプールでは、大半は年配の方が水中ウォーキングをしていますが、ある日、若い小柄な女性が上級者用の往復レーンをまるで人魚のように泳ぐ姿に目を奪われました。本当に無駄のない動きで泳いでいました。

自分との違いは何なのかと疑問を持ちました。
帰宅後、動画サイトで、「アスリート解体新書 (21)水泳/クロール・平泳ぎ ~水の抵抗を味方に変える~」という動画を発見しました。

  • 水の抵抗を減らすため、水面に平行な姿勢をとること
  • クロールでは、85%は手の掻きで推進力を生み出す
  • クロールのストロークは、エントリー、キャッチ、スカーリングプル、フィニッシュに分けられ、そのうちキャッチとフィニッシュを速くする
  • 水を斜め(45度以内)に押し出す
  • クロールでは、キックは膝から下を小刻みに動かす
  • 平泳ぎでは、主にキックが推進力を生み、足引をできるだけ腰の内側で行い、素早くキック
  • 平泳ぎでは、水面に平行な姿勢を長くとる

この内容はまさに目からウロコ。
次の日、さっそく実践してみました。 その後も、継続してプールで泳ぎ続け(この夏だけで30回以上)、ようやく泳ぎのコツみたいなものが分かった気がします。

 翻訳においても、この「気付き」がとても大切だと思います。 フリーランスとして仕事をしていてもクライアントからフィードバックをもらうことはほぼ皆無。仕事が来ているからおそらくこれでいいんだろうなくらいで、本当に自分の実力がどの程度なのか客観的に知ることはなかなかできません。 つまり、フリーランスの場合、自分自身で一流の翻訳者との違いに「気づき」、それを克服していく必要があるのです。 さらに難しいことに、公開されている無数の特許公報の中から、どれが一流かどうか、初心者の頃はなかなか判断がつかないかもしれません。 この業界で慢性的に一流の翻訳者が不足していると言われている理由は、このあたりにあるのかもしれません。

フィットネス業界でもパーソナルトレーナーがブームになっていますが、 こうした気づきを与えられる翻訳のパーソナルトレーナーも必要なのかもしれません。

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2016年9月2日金曜日

[書評] 科学は歴史をどう変えてきたか: その力・証拠・情熱



■目次
はじめに 淡いブルーの点
1 宇宙―そこには何があるのか
2 物質―世界は何でできているのか
3 生命―私たちはどうやってここまで来たか
4 エネルギー―無限のエネルギーを手に入れられるのか
5 人体―生命の神秘とは
6 脳―私たちとは
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本書は、BBCのドキュメンタリーと連携して作成された書籍であり、古代から現代に至るまで科学の歴史を、カラーの図表や写真を用いて分かりやすく説明しています。内容的にも難しすぎず、易しすぎず、中学生や高校生の教科書としても適していますが、幅広い分野の知識を得たい特許翻訳者にとっても役立つおすすめの一冊です。

通常の教科書と違って本書が面白かったのは偉大な科学者の性格にも触れている点。例えば、ニュートンは、「気難しく内向的な人間」であり、「木からリンゴが落ちるのを観て、その同じ力が月にも働いている」と思ったという有名な話は、ニュートン自身が晩年に作り上げた全くのフィクションであったようで、こうしたイヤミな一面にも触れています。科学者の人間的な部分を描くことで、科学に疎い一般の読者(視聴者)にも、感情移入しやすくなるようにされています。

また、本書では、主にヨーロッパにおける戦争や革命と、発明との関係にも言及されています。その発明がその当時、どのような意義を持ったかを知ることができます。

最後に、本書が素晴らしかったのが、翻訳のクオリティの高さです。翻訳書であることを感じさせないほど読みやすくなっています。翻訳者としても、こうした良質な科学文献を日本人に伝えるという意義のある作業に関われることはとても充実感があることだろうと感じます。

 なお、BBCのドキュメンタリー番組は、"The Story Of Science"とネットで検索すると、見つかります。





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2016年8月27日土曜日

原稿のチェック(校正)方法

一度翻訳した原稿を納品する前に、訳抜け、誤訳をチェックする必要がありますが、以前の記事『仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する』にも記載した通り、提出期限までこの作業を繰り返してしまい、多大な労力と時間が費やされることになります。

そういうわけで、最近は、自分なりにシンプルな原稿のチェック(校正)方法を確立しています。
具体的には、訳文と原文をそれぞれコピーし(Tradosの場合では左半分に原文、右半分に訳文が対比されてコピーされたもの)、それを青色のボールペンで原文と訳文をそれぞれ単語毎(あるいは文節毎)下線を引いていきます。訳抜け、誤訳等を発見したときは、赤色のボールペンを使用して、下線やメモを残します。最後に、そのメモを見ながら、パソコン上で修正していき、チャックが完了となります。

その際、使用するボールペンとしては、非常に滑らかな書き心地の『多機能ペン ジェットストリーム 4&1』を重宝しています。

  • 多機能ペン ジェットストリーム 4&1



しかし、チェック作業の多くを青色のボールペンで行うため、どうしても青色のインクの減りが早くなってしまいます。

そこで、最近、はじめて万年筆を使い始めました。
文房具店で実際にいろいろ試し書きしましたが、なぜか安価な『パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-LF 細字 ブルー』が一番書きやすかったので購入しました。おそらく万年筆では珍しく、三角グリップを採用しており、握りやすくなっているからだと思います。また、このカクノのペン先は、パイロットの万年筆の中でも高価なタイプ『コクーン』や『プレラ』と同一のようなので、品質的にも問題ないようです。
万年筆は、ボールペンよりも少ない力で書けるので、満足しています。


  • パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-LF 細字 ブルー






2016年8月16日火曜日

[PC周辺機器] トラックボール


トラックボールは、一度使ったら、マウスを使うのが嫌になってしまうほど快適です。マウスからトラックボールに切り替えて、もう5年以上経ちますが、たまにマウスを使うと、どうして無駄に手を動かさないといけないのかと、イライラしますね。
トラックボールは、手の位置を固定したまま、ただ指だけを動かせばいいので、腱鞘炎になる心配もありません。また、机の上で、マウスを動かすスペースを設ける必要もなく、省スペースにも有効です。特に、マウスの移動が大きくなる大画面やデュアルモニターを用いている場合に、有効です。

使用前は、使い慣れるのが大変なんじゃないかと思っていましたが、それほど難しいものではなく、ほんの数時間ですぐに慣れました。

私は、Windowsだけでなく、MacのPCでもこのトラックボールを使用しています。つまり、MacのMagic Trackpadより使いやすいと思っています。おすすめです。


  • LOGICOOL ワイヤレストラックボール M570t




  • Apple Magic Trackpad MC380J/A

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