2016年7月11日月曜日

[おすすめ書籍] 日本人のための日本語文法入門 原沢 伊都夫 著

翻訳者としてより高いレベルを目指すために、日本語の文法を学ぶことが重要だと思います。これは、和訳において、日本語をより正確に表現するためだけでなく、英訳において、日本語を正確に汲み取るためにも必須だと思います。

そこで、入門書として本書が非常に分かりやすくおすすめです。


  • 日本語に主語は重要か? 「は」と「が」はどこが違う?
「が」は、動作の主体(いわゆる「主語」)を表す。
それに対し、「は」は、以下のように、話者によって文の主題を提示する。

  1. 母親書籍で翻訳原稿を作成した。
  2. 書斎では、母親が翻訳原稿を作成した。(「書斎」について言えば)
  3. 翻訳原稿母親が書斎で作成した。(「翻訳原稿」について言えば)
以上のように、同じ事実示しながら、「は」を用いて、異なる主題を提示していることがわかります。これを、「主題−解説」の構造と呼ばれています。さらに、以下のようにさまざまな格助詞(ガ格、ヲ格、二格、デ格、ト格、へ格、ヨリ格、カラ格、マデ格)を主題化することが可能です。
  1. 日曜日母親が書斎で翻訳原稿を作成した。(二格:日曜日母親母親が書斎で翻訳原稿を作成した。)
  2. 駅へは母親が迎えに行った。(へ格:母親が駅へ迎えに行った)
  3. 母親よりは私のほうが背が高い。(ヨリ格:母親より私のほうが背が高い。)
  4. その蛇口は水が出ない。(カラ格:その蛇口から水がでない)
  5. 駅までは徒歩で5分かかる。(マデ格:駅まで徒歩で5分かかる。)

  • なぜ自動詞が多用されるのか? 受身文に秘められた日本人の世界観とは?

本来、自動詞は、「雨が降る」などの自然現象を表すときによく使われ(自然中心)、一方、他動詞は「私が衣服を洗濯する」など人間の行動が起点となり、物事を引き起こすことを表すときに使われます(人間中心)。
しかし、日本語では、英語と比べても、人間に関連することも自動詞で表現することが多いそうです。例えば、
私は驚いた。 I am surprised.
犯人が捕まった。 A criminal was caught.
富士山が見える。 I see Mt. Fuji.
君の気持ちがわかる。 I understand your feeling.

つまり、日本語では、人間の活動も自然界の流れの一つとしてとらえる傾向があるようです。

自動詞と他動詞の見分け方としては、
 自動詞は、「ヲ格成分を持たない」もの
 他動詞は、「ヲ格成分を持つ」もの
と区別できますが、但し、例外として、「起点」と「通過点」を表すヲ格は除外されます。
 起点をヲ格とする移動動詞としては、「出る」「出発する」「離れる」などが挙げられ、
 通過点をヲ格とする移動動詞としては、「歩く」「渡る」「走る」などが挙げられます。


  • 主節と従属節からなる複文に表れる相対テンス

例文)日本を来るとき、同僚が送別会を開いてくれた

英語の場合、「時制の一致」という考えのもと、以下のように表現されます。

When I came to Japan, my colleagues held my party.

そのため、日本語を学ぶ外国人は、
「日本を来たとき、同僚がパーティーを開いてくれた。」とすべきでは?と質問してくるそうです。

これを説明する際に用いられるのが、相対テンスという考え方。

これは、主節の事態が起こっているとき(つまり、「同僚が送別会を開いてくれた」とき)を基準にして、従属節の事態がいつ起こっているかによって、テンスが変わるという考え方です。

この例文では、従属節の「日本に来るとき」は、主節の「送別会を開いてくれた」ときよりも、後に起きる事態なので、ル形が使われるそうです。

一方、日本に同僚がいて、日本に着いたとき、日本で同僚がパーティーを開いてくれた場合は、タ形になるそうです。


■感想
英語の文法が昔から好きで、パズルを解くようで面白いと感じていました。同様に本書を読むと、外国人が日本語を学ぶ際の日本語文法も、論理的な規則があって、とても面白いものでした。本書は英語の文法との違いを中心に説明しているので、翻訳者にとっても有益な内容だと思いました。







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2016年6月7日火曜日

[おすすめの科学雑誌] New Scientist

特許翻訳者におすすめの英語の科学雑誌を紹介します。


  • New Scientist




このイギリスの科学雑誌を少し前にイギリス人の特許翻訳者の方から数冊いただいて、最近読み終えました。とても勉強にもなり、内容も面白かったので、kindle版を継続的に購入しようと考えています。
この雑誌は、さまざまな技術分野の最先端の研究を分かりやすい紹介していて、技術的な説明に偏りすぎていないので、文系出身の方でもスラスラと楽しみながら読めると思います。おすすめです。


  • Scientific Americans

これは、アメリカの一般読者向けの科学雑誌で、翻訳学校の講師の方から紹介されました。New Scientistよりもお手頃価格。





2016年5月30日月曜日

筋トレの日々⑤怪我を予防する

 最近では、体重よりも10kg以上重い70kgのベンチプレスを挙げられるようになりました。この重さになると、手首への負荷も大きくなり、たまに軽い痛みを感じるようになりました。今後さらなる重量に挑戦していく上で手首への怪我を予防するため、サポーターを購入しました。
 これは簡単に装着できて、手首がしっかり保護されるので、安心してベンチプレスやダンベルカールを行えるようになりました。テーピングなどでも手首を固定できるようですが、毎回つける手間を考えると、このサポータをおすすめします。



●mc David (マクダビッド) 手首サポーター スポーティニット リスト M513


注)1箱に1つのサポータしか入っていないので、両手首につけるために2つ購入する必要があります。

2016年5月25日水曜日

[映画]夕凪の街 桜の国


前回紹介した「昭和史」に続いて、太平洋戦争に関わる映画「夕凪の街 桜の国」を紹介します。

この映画は、原爆投下された広島を舞台に、被爆した家族が2世代にわたって、原爆症に悩まされる様子を描いています。

原爆が投下された直後の生々しく痛々しい部分はほとんど映像化しておらず、被爆した女性とその子供たちが原爆症を抱えながら、必死で生きていくシーンを中心に描いています。

原爆で被爆したものの、なんとか生き延びた女性を演じるのが、麻生久美子。原爆投下で妹、父親を亡くした過去を抱えながら、自分自身も原爆症に悩まされる女性を繊細な演技で表現しています。

そして、被爆したがなんとか生き延びた女性から産まれた娘を演じるのが、田中麗奈。戦争も原爆も過去のものとしながらも、母親を若くして亡くした原因(原爆症?)に向きあおうとする、明るく前向きな女性を多彩な表情で表現しています。

久しぶりに邦画を観ましたが、この女優二人の演技力は素晴らしいですね。

この映画の中で、個人的に最も印象に残ったセリフは、以下。
❝十年経ったけど、原爆を落とした人は、私を見て「やった!また一人殺せた」と、ちゃんと思うてくれとる。ひどいなぁ。てっきり私は、死なずにすんだ人かと思ってたのに。❞
このセリフを聴いたとき、原爆を投下した人への怒りと罪のない人たちが犠牲になったことに対する悲しさが入り混じったなんとも言えない気持ちになりました。

同名の漫画が、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞および第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞しただけあって、過去と現在を行き来するストーリもよかったです。難しいテーマを扱った映画ですが、後味は悪くなかったですね。特に女性におすすめの映画です。









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2016年5月18日水曜日

[書評]昭和史 1926-1945 半藤一利著




【目次】
はじめの章 昭和史の根底には、「赤い夕陽の満州」があった
       日露戦争に勝った意味
第一章 昭和は「陰謀」と「魔法の杖」で開幕した
     張作霖爆殺と統帥権干犯
第二章 昭和がダメになったスタートの満州事変
     関東軍の野望、満州国の建国
第三章 満州国は日本を「栄光ある孤立」に導いた
     五・一五事件から国際連盟脱退まで
第四章 軍国主義への道はかく整備されていく
     陸軍の派閥争い、天皇機関説
第五章 二・二六事件の眼目は「宮城占拠計画」にあった
     大股で戦争体制へ
第六章 日中戦争・旗行列提灯行列の波は続いたが……
     盧溝橋事件、南京事件
第七章 政府も軍部も強気一点張り、そしてノモンハン
     軍縮脱退、国家総動員法
第八章 第二次大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした
     米英との対立、ドイツへの接近
第九章 なぜ海軍は三国同盟をイエスと言ったか    
     ひた走る軍事国家への道
第十章 独ソの政略に振り回されるなか、南進論の大合唱  
     ドイツのソ連進行
第十一章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された
      太平洋戦争開戦前夜
第十二章 栄光から悲惨へ、その逆転はあまりにも早かった
      つかの間の「連勝」
第十三章 大日本帝国にもはや勝機がなくなって……
      ガダルカナル、インパール、サイパンの悲劇から特攻隊出撃へ
第十四章 日本降伏を前に、駆け引きに狂奔する米国とソ連
      ヤルタ会談、東京大空襲、沖縄本島決戦、そしてドイツ降伏
第十五章 「堪へ難キヲ堪ヘ、忍ビ難キヲ忍ビ……」
       ポツダム宣言受諾、終戦
むすびの章 三百十万の死者がかたりかけてくれるものは?
      昭和史二十年の教訓
関連年表、あとがき、参考文献
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 学校では昭和史を詳しく教えられることがなく、また、自ら学ぶこともしてこなかった。しかし、アジア諸国を訪れたり、日本にいても、アジアを含む外国人と接する機会が多くなる中、自国の歴史を学ぶ必要性を感じ始めていた。戦後70年を迎え、戦争を知らない世代がますます増えて、戦争は風化いくことだろう。
 そうした時に、ライフネット生命保険の出口治明著『「思考軸」をつくれ-あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由 』の中で、本書が紹介されていて、読んでみようという気持ちになった。
 本書は著者が知人に講義する形で記述された本なので、難解な言葉を使わず、時系列順に説明していて、スラスラを読むことができた。事実や事件を羅列するのではなく、渦中にいた人物(天皇陛下など)が実際発した言葉が収められており、かれらの感情も把握することもできた。日露戦争の勝利から太平洋戦争に至るまでの日本中の熱狂により、勝てるはずのない戦争に誰もが流されてしまったことがよくわかった。また、『事実は小説よりも奇なり』と言われるように、さまざまな(悲劇的)ドラマが生まれていた。特に、原爆投下後、戦争を継続したい軍部に対する、和平を求める天皇陛下側との葛藤、最後に天皇陛下が終戦の詔勅を行うまでの流れは、どの小説よりも緊迫感があり面白かった。東京での地名や、日本軍が侵略したアジアの国々(フィリピン、ビルマ、満州など)の地名も、実際に行ったことがある場所なので、感慨深く、リアルな出来事として迫ってくるものがある。

 戦争を風化させないためにも、戦争を知らない世代に読んでもらいたい。






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2016年2月27日土曜日

集中力を持続する方法

在宅で仕事をしていると、動画サイトを見てしまったり、ネットの記事を読んでしまったりして、なかなか仕事に集中できないことがあります。

こうした場合に有効な、集中力を持続する方法を紹介します。

ツァイガルニク効果(ツァイガルニクこうか、Zeigarnik effect)は、人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。

この効果を利用すれば、特許明細書の翻訳中に、動画を見てしまった場合も、仕事のことが気になってまた仕事を再開することができます(これは、脳科学者の中野信子さんがおすすめしていた方法です)。

例えば、特許明細書の第1実施形態の翻訳を終えたところで、終了するよりも、第1実施形態の途中で中断するほうが翻訳のことが気になりますね。

もっと言えば、一文(句読点)の後で翻訳を中断するよりも、一文の途中で翻訳を中断するほうが気になります。
さらには、一単語の入力後に翻訳を中断するより、一単語の入力途中に翻訳を中断する方が気になりますね(但し、スペルミスが無いようにくれぐれもご注意を!)。

これを行うと、中断時間は短くなり、仕事を再開しやすくなります。

●参考文献
The Zeigarnik Effect and the Cognitive Availability of Regrettable Actions and Inactions
wiki/ツァイガルニク効果

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2016年2月15日月曜日

おすすめの映画

ここ数年、英語の勉強も兼ねて、映画を観るようにしています。HuluやAmazonプライム・ビデオでもよく観ますが、映画館にもよく行きます。いちおう観た映画は評価していて、その中で五つ星をつけた、特におすすめの映画を紹介します。


  • はじまりのうた BEGIN AGAIN
キーラ・ナイトレイ演じる女性シンガーソングライターが、ミュージシャンの恋人の浮気が原因で失恋してしまう。友人が彼女を励まそうとライブバーに連れていき、無理やり彼女をステージに上げて、歌を歌うこととなる。偶然居合わせた音楽プロデューサーの目に留まり、デビュー・アルバムの作製に取り掛かるという話。マーク・ラファロが演じるこの音楽プロデューサーも、自分が設立した会社をクビになり、彼女とともに再出発(BEGIN AGAIN)する。とにかく爽快な映画で、特に女性におすすめですね。素敵な音楽が流れるので、いい音響で観賞するといいと思います。

  • セッション
19歳のジャズドラマーが、アメリカ最高の音楽学校に入学し、最高の指揮者のもとで、バンドメンバーとして指導を受けるという、普通の吹奏楽の映画かと思いきや、徐々に想像を超える展開に。彼が、この指導官の限度を越えるスパルタ指導に徐々に反発していき、ついには狂気的なラストを迎えます。それなりの映画通でも、こんな映画観たことないと思います。

  • ゼロ・グラビティ 3D
 それまでは、あまり3D映画が好きではなかったが、この映画で、まるで宇宙に放り出されるような臨場感を味わうことが出来、好きになりました。宇宙旅行は高額でまだまだ行けませんが、この映画なら、チケット代(3Dメガネ代を含む)だけで宇宙を体験できるので、安すぎですね。

  • インターステラー
これも3Dで観た宇宙映画ですが、映像だけでなく、ストーリーも素晴らしいです。地球の時間と宇宙の時間とで進み方が違うところが一番の肝。宇宙に行った宇宙飛行士の父親と地球で待っているその娘が同じ年齢になってしまう。感動的なストーリーで、おすすめです。


  • きっと、うまくいく
 インド映画歴代最大の興行収入を得た作品。「インド映画ってミュージカルばっかりで感情移入できない」と思っていた自分でも、ものすごく楽しめました。インド工科大学の寮を舞台に、若者の自殺というシリアスな社会問題をテーマにした、笑いあり、涙あり、かつとても深い映画です。インド工科大学は、入試倍率が50倍以上(ハーバード大学が11倍)の世界一難関大学の一つだそうです。この映画は、Amazonプライム会員の方は、無料で観れます。

『はじまりのうた』以降、20本以上の映画を観ましたが、未だ五つ星を付けた映画はありません。期待していた宇宙映画『オデッセイ』も残念ながら四つ星止まりでした。

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注目の投稿

[書評] 投資家が「お金」よりも大切にしていること 藤野英人

目次  第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目(8割の学生が「お金儲け=悪」日本人は世界一ケチな民族 ほか) 第2章 日本をダメにする「清貧の思想」(バットマンはなぜ「かっこいい」のか?日本のヒーローは…公務員 ほか) 第3章 人は、ただ生き...