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2017年5月2日火曜日

[書評] 話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる! 野口悠紀雄


本書は、精度が格段に向上したスマホの音声認識機能を使って、著者がはじめて書き上げた書籍です。なんと10倍の速さで書けるようになったそうです。


 具体的に以下のような文章作成方法が紹介されています。
①メモ入力
スマホ(iphoneまたはAndroid)のGoogleドキュメントアプリで音声認識機能を利用して行っている。
この作業は、スマホを利用することで、散歩しながらでも行える。

②予備的編集
論理展開を整理するため、iphoneやipadを使って行っている。

③本格的編集
パソコンのテキストエディタ(wordではなく、文章作成に特化したPC用ソフト)を使ってキーボードで行っている。


④紙にプリントアウトして編集
最終的には、紙にプリントアウトした原稿に赤字を入れ、それを見ながら、パソコンで修正し、原稿を完成させる。
~~~~~~~~~~~~~~~~

スマホを用いた音声入力による検索法も紹介しています。
例えば、「○○駅(最寄駅) ○○線 時刻表」と音声入力すると、簡単に時刻表を見つけることができたり、
「○○(目的地)に行きたい」と音声入力すれば、簡単に地図アプリを立ち上がり、ナビのように利用することができます。

その他、「平成何年は西暦何年」「平均株価」などを検索する例として挙げられています。

こうした検索は、歩きながらでもできて非常に便利です。
  • 感想

私自身、スマホの文字入力が苦手で、できるだけパソコンのキーボードを使っていたので、スマホの音声認識機能をもっと活用してみたくなりました。ただし、翻訳の際に利用するとなると、翻訳する際に同時に行う情報検索や、その後の編集作業を考えると、さすがにハードルが高いなと思います。

しかし、今のように音声認識機能の精度が向上していない5年ほど前にも、翻訳者の方で、腱鞘炎のために音声認識機能を使って翻訳作業を行っているという話を聞いたことがありました。将来的にはより多くの人がこうした機能を利用して翻訳するようになるかもしれません。特に、「座り続ける」作業は、健康に多大な悪影響を及ぼすので、スマホ片手に散歩しながら、翻訳の仕事をする光景が普及するかもしれません。



  • 話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!

目次
序章 音声入力は、知的作業に革命をもたらす
音声入力によって、文章を書くのが楽になった
仕事の仕組みを再構築する必要
人工知能技術の成果

第1章 いつでもどこでもメモを取れる
いつでもどこでもメモを取れる外部脳の出現
メモシステムの構築が必要
メモにはさまざまなものがある
音声入力でメールを書く

第2章 アイディア製造工場の稼働法
アイディアを生むには、それを求めなければならない
アイディアを出すには、問題に集中することが必要
刺激によってアイディアが生まれる
アイディア生産における音声入力の意味

第3章 「見える化」で頭を鍛える
音声入力で頭の中を「見える化」できる
伝える力は「構造」によって決まる
口頭のプレゼンテーションは、いつも求められている
音声入力でプレゼンテーション能力を鍛える

第4章 音声入力で本格的な文章を書く
雑誌掲載用原稿ができるまで
文章を楽に書けるようになった
テーマをどのようにして見つけるか
「編集」とは、構成を正しくすること
文章を書く生活
音声入力はどんな世界を作るか

第5章 いつでもどこでもすぐに検索
「いつでもどこでも検索できる」ことの意味
検索の容易化に合わせて仕事のスタイルを変化させる
検索のテクニック
キーワード検索からセマンティック検索へ

第6章 音声入力でのスケジューリング
スケジュールを閲覧する端末から、入力する端末へ
メモをスケジュールに紐付ける
紙の手帳は依然重要

第7章 人工知能はいかなる世界を作るか?
音声入力は人工知能技術の成果
人工知能は敵か味方か
将来の教育をどうする?

補論1 音声入力機能の使い方

補論2 「超」整理手帳アプリについて





よろしければ、ポッチッとお願いします。

2016年11月19日土曜日

[書評] How to Teach Quantum Physics to Your Dog


本書は、物理学の教授であるチャドが犬に量子物理学を教える本。好奇心が掻き立てられる内容で、翻訳書と合わせて読むと、とても勉強になりますね。

日本でも入門書として「犬でもわかる」「猿でもわかる」シリーズはよくありますが、難しい内容をわかりやすく伝えていることを意図し、読者の心理的障壁を取り除いているだけだと思います(あまりこうした本は読んだことないので正確には分かりませんが)。でも、本書では、実際に(英語が理解できる)犬と対話しながら、簡潔な英語でわかりやすく量子物理学を説明していく(当然、犬が理解できるわけはありませんが)。

元Google日本法人社長の村上憲朗さんは、教養として「量子力学」を学ぶことをライフワークにしているそうです。量子力学は、従来の常識とはかけ離れた世界で、究極的には哲学的問題に突き当たる。量子力学には、「一生を棒にふってもいいと思える」ほどの面白さがあるそうです。

ところで、"How to Teach Quantum Physics to Your Dog"という英語タイトル、「犬でもわかる~」とせずに、あくまでも「~犬への教え方」としているのは、訴訟社会アメリカならではなのでしょうか?電子レンジで猫をチンした事件で敗訴したメーカーが、多額の賠償金を支払った後、取扱説明書に「動物等を乾かす目的で使用しないでください」とあるのは有名な話ですが・・・。

  • 目次 

はじめに 犬に物理の話をするのはなぜ? 量子物理学のすすめ
1章 どっちへ行く? 両方へ行く 波動と粒子の二重性
2章 骨はどこ? ハイゼンベルクの不確定性原理
3章 シュレーディンガーの犬 コペンハーゲン解釈
4章 たくさんの世界、たくさんのおやつ 多世界解釈
5章 まだ着かないの? 量子ゼノン効果
6章 穴掘り無用 量子トンネル効果
7章 気味の悪い遠吠え 量子もつれ
8章 ウサギを転送してくれたまえ! 量子テレポーテーション
9章 チーズでできたウサギ 仮想粒子と量子電磁力学
10章 悪のリスにご用心 量子物理学の乱用
  •  How to Teach Quantum Physics to Your Dog




  • 犬でもわかる現代物理



  • 量子力学が語る世界像(村上憲朗さんがおすすめしていた入門書)



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2016年11月8日火曜日

[書評] 感動する科学体験100~世界の不思議を楽しもう~

本書は、英国New Science社が科学関係者から人生で一度はやってみたい科学体験を100個集めた翻訳本。原書は"100 Things to Do Before You Die"というタイトルでベストセラーになり、New Science社から翻訳権を得た翻訳者が、日本向けにアレンジして出版したそうです。

『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろかSP』というテレビ番組で、普通の人たちが秘かに抱いている、具体的でユニークな夢を知るのも楽しいですが、本書にでてくる科学者たちの夢もとても興味をそそられました。その中で、自分もやってみたいと思ったものをピックアップしておきます。


  • ロケットの打ち上げを見る(種子島宇宙センター、内之浦宇宙空間観測所)

  • 『客家円楼(中国広州)』を訪問する

  • 土星の輪を見る

  • 水中ホタルの湾で泳ぐ(プエルトリコ、ヴィエケス島)
  • 世界最大の魚(ジンベエザメ)と泳ぐ

  • 粒子検知システムを訪問する(スイス、ジュネーブのCERN研究所
  • 祖先を訪れる(人類のはじまった場所タンザニア オルドヴァイ渓谷)

  • 古代美術に感動する(フランス、マス・ダジールの洞窟)

  • ホタルの木を見に行く(インドネシアのスマトラ島、パプアニューギニアの島々)



感動する科学体験100 ~世界の不思議を楽しもう~ (知りたい!サイエンス)


100 Things to Do Before You Die (Plus a Few to Do Afterwards)



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2016年9月18日日曜日

[書評] 昭和史 戦後篇 1945-1989 半藤 一利 (著)

  • 目次 


天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■感想 
本書を読むと、戦後の日本は、 戦前、戦時中の『昭和史 1926-1945』とはまったく違う時代となったことが認識できます。福沢諭吉が江戸時代と明治時代というまったく異なる2つの時代を半分ずつ生きたことを「一身にして二生を経た」といったようですが、この時代をまたがって生きた人たちも同様に感じたことだろうと思います。
 戦後の日本人は、悲惨な戦争をもう二度と繰り返したくないという思いで平和な国家を志向する。そのため、戦争責任者については弾劾するが、天皇陛下には一切の戦争責任が負わせないように画策する。日本人からこのような趣旨の手紙を多く受け取ったマッカーサーは、早くから天皇陛下を裁判にかけないことを決めていたようだ。日本人にとって天皇という存在の意味を考えさせられる。

それと同時に、日本は世界一の経済大国まで登りつめる。これは、日本人の勤勉さにもよるが、数々の幸運が重なった結果であると分かる。朝鮮戦争が勃発すると日本経済は前例のない特需に湧き、その中でソニーやトヨタなどの世界的企業が誕生した。

また、本書を読むと、これからの日本のあるべき姿について考えさせられる。北朝鮮のミサイル問題、中国との尖閣問題など東アジアの緊張が高まるにつれ、憲法改正、武装化の議論が持ち上がるが、これらの問題は日本が戦後歩んできた歴史を踏まえて考えることが大事だと感じます。「戦争のない世界を」という究極の理想を志向して創案された憲法9条により、日本という国が世界の国々から道徳的な国家として尊敬の念を得られてきたという側面があると思います。

 憲法9条 条文

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。


なお本書について、詳しい内容は、
社会派ブロガーChikirinの日記『昭和史 戦後編』を読んで 
にまとめられています。

■昭和史 戦後篇 1945-1989

2016年9月2日金曜日

[書評] 科学は歴史をどう変えてきたか: その力・証拠・情熱



■目次
はじめに 淡いブルーの点
1 宇宙―そこには何があるのか
2 物質―世界は何でできているのか
3 生命―私たちはどうやってここまで来たか
4 エネルギー―無限のエネルギーを手に入れられるのか
5 人体―生命の神秘とは
6 脳―私たちとは
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本書は、BBCのドキュメンタリーと連携して作成された書籍であり、古代から現代に至るまで科学の歴史を、カラーの図表や写真を用いて分かりやすく説明しています。内容的にも難しすぎず、易しすぎず、中学生や高校生の教科書としても適していますが、幅広い分野の知識を得たい特許翻訳者にとっても役立つおすすめの一冊です。

通常の教科書と違って本書が面白かったのは偉大な科学者の性格にも触れている点。例えば、ニュートンは、「気難しく内向的な人間」であり、「木からリンゴが落ちるのを観て、その同じ力が月にも働いている」と思ったという有名な話は、ニュートン自身が晩年に作り上げた全くのフィクションであったようで、こうしたイヤミな一面にも触れています。科学者の人間的な部分を描くことで、科学に疎い一般の読者(視聴者)にも、感情移入しやすくなるようにされています。

また、本書では、主にヨーロッパにおける戦争や革命と、発明との関係にも言及されています。その発明がその当時、どのような意義を持ったかを知ることができます。

最後に、本書が素晴らしかったのが、翻訳のクオリティの高さです。翻訳書であることを感じさせないほど読みやすくなっています。翻訳者としても、こうした良質な科学文献を日本人に伝えるという意義のある作業に関われることはとても充実感があることだろうと感じます。

 なお、BBCのドキュメンタリー番組は、"The Story Of Science"とネットで検索すると、見つかります。





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2016年7月27日水曜日

[書評] 職業としての小説家 村上春樹著



本書は、村上春樹が小説家について語った本だが、小説家と対比して、「翻訳者」について考えると面白い。

小説家との違いについて

まず最初に、著者は「作家というのは基本的にエゴイスティックな人種だし、やはりプライドやライバル意識の強い人が多い。」と述べています。たしかに人と違ったオリジナリティのあるアイディアを提供できる人でないと小説家には向かないですね。そういう意味では、発明者に似ているかもしれません。

一方、翻訳者について言えば、個人的には、割りと素直で従順な人で、間違いを自分のせいだと考えてしまう人が向いているように思います。逆に、原文の誤りや解釈について、自分が正しいことを延々と主張する人は向いていないように思いますね。

次に、著者は、小説は誰でも書こうと思えば書けるものであり、実際に歌手や画家など異業種から来た多くの新人作家が小説を書いて、それが評判となることもあるが、二十年、三十年にもわたって小説家として活躍することは難しいと述べています。

これについて言えば、お笑い芸人である又吉直樹さんが書いた「火花」が芥川賞を受賞したことからも納得できますね。ただし、継続して面白い小説を書き続けられるかが小説家としての本当の資質であるようで、今後が勝負ですね。

一方、特許翻訳者は、日本語力と外国語力を含む語学力、論理的思考力、細部を対する注意力、技術理解力など様々な能力が求められ、翻訳者として継続していくことも難しいですが、それ以上に新規参入していくことが難しいと思います。翻訳会社が設けているトライアルが、通常の明細書より難易度が高いものに設定していることからも参入障壁を高くしているように思います。
小説家との共通点について
「長期間にわたる孤独な作業を支える強靭な忍耐力」は、小説家と同じように、フリーランスの翻訳者にも必要となります。普段は、家に閉じこもって仕事をするため、ほとんどしゃべることがない日が続くことになります。長期的にこうした生活を続けるためにも、社会との接点を見つける努力も必要だと思います。

■感想
 以前は、村上春樹氏の小説をよく読んでいましたが、最近は、本書のようなエッセイを好んで読みます。30年以上続けた作家としての生活スタイルは、とても参考になります。著者は翻訳者としても活躍しているので、いつか「職業としての翻訳家」を書いてもらいたいですね。 

 本書の中で、著者は、神宮球場でヒルトンのいう打者が二塁打を打ったのを見たとき、突然、小説を書こうと決心したようです。私自身もこうした直感を大切にしたいと思っています。いつか、こうした啓示のような出来事があったときは、躊躇わず、前に踏み出したいと思っています。


そして、処女作である「風の歌を聴け」を書き上げたあと、自分で読み返した際、その内容があまりに面白くなかったので、一度英文に翻訳し、さらに、それを日本語に翻訳してみたことを語っています。この方法により、独特の新しい文体が生まれ、結果的に「群像」の新人賞を獲得し、小説家としての道が開かれたそうです。彼の文章が翻訳調といわれる所以だそうです。

私は、今のところ特許翻訳のみを対象としていますが、いつかノンフィクション、小説などを対象とする翻訳もしてみたいです。また、今はまったく思いませんが、突然の直感で、小説を書き始めることもありかもしれません。



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2016年5月18日水曜日

[書評]昭和史 1926-1945 半藤一利著




【目次】
はじめの章 昭和史の根底には、「赤い夕陽の満州」があった
       日露戦争に勝った意味
第一章 昭和は「陰謀」と「魔法の杖」で開幕した
     張作霖爆殺と統帥権干犯
第二章 昭和がダメになったスタートの満州事変
     関東軍の野望、満州国の建国
第三章 満州国は日本を「栄光ある孤立」に導いた
     五・一五事件から国際連盟脱退まで
第四章 軍国主義への道はかく整備されていく
     陸軍の派閥争い、天皇機関説
第五章 二・二六事件の眼目は「宮城占拠計画」にあった
     大股で戦争体制へ
第六章 日中戦争・旗行列提灯行列の波は続いたが……
     盧溝橋事件、南京事件
第七章 政府も軍部も強気一点張り、そしてノモンハン
     軍縮脱退、国家総動員法
第八章 第二次大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした
     米英との対立、ドイツへの接近
第九章 なぜ海軍は三国同盟をイエスと言ったか    
     ひた走る軍事国家への道
第十章 独ソの政略に振り回されるなか、南進論の大合唱  
     ドイツのソ連進行
第十一章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された
      太平洋戦争開戦前夜
第十二章 栄光から悲惨へ、その逆転はあまりにも早かった
      つかの間の「連勝」
第十三章 大日本帝国にもはや勝機がなくなって……
      ガダルカナル、インパール、サイパンの悲劇から特攻隊出撃へ
第十四章 日本降伏を前に、駆け引きに狂奔する米国とソ連
      ヤルタ会談、東京大空襲、沖縄本島決戦、そしてドイツ降伏
第十五章 「堪へ難キヲ堪ヘ、忍ビ難キヲ忍ビ……」
       ポツダム宣言受諾、終戦
むすびの章 三百十万の死者がかたりかけてくれるものは?
      昭和史二十年の教訓
関連年表、あとがき、参考文献
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 学校では昭和史を詳しく教えられることがなく、また、自ら学ぶこともしてこなかった。しかし、アジア諸国を訪れたり、日本にいても、アジアを含む外国人と接する機会が多くなる中、自国の歴史を学ぶ必要性を感じ始めていた。戦後70年を迎え、戦争を知らない世代がますます増えて、戦争は風化いくことだろう。
 そうした時に、ライフネット生命保険の出口治明著『「思考軸」をつくれ-あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由 』の中で、本書が紹介されていて、読んでみようという気持ちになった。
 本書は著者が知人に講義する形で記述された本なので、難解な言葉を使わず、時系列順に説明していて、スラスラを読むことができた。事実や事件を羅列するのではなく、渦中にいた人物(天皇陛下など)が実際発した言葉が収められており、かれらの感情も把握することもできた。日露戦争の勝利から太平洋戦争に至るまでの日本中の熱狂により、勝てるはずのない戦争に誰もが流されてしまったことがよくわかった。また、『事実は小説よりも奇なり』と言われるように、さまざまな(悲劇的)ドラマが生まれていた。特に、原爆投下後、戦争を継続したい軍部に対する、和平を求める天皇陛下側との葛藤、最後に天皇陛下が終戦の詔勅を行うまでの流れは、どの小説よりも緊迫感があり面白かった。東京での地名や、日本軍が侵略したアジアの国々(フィリピン、ビルマ、満州など)の地名も、実際に行ったことがある場所なので、感慨深く、リアルな出来事として迫ってくるものがある。

 戦争を風化させないためにも、戦争を知らない世代に読んでもらいたい。






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2016年1月21日木曜日

[書評]座らない!: 成果を出し続ける人の健康習慣


■はじめに
最近、NHK「クローズアップ現代」で取り上げられたみたいで、話題になっている本。最新の研究に基づいていて、健康オタクの方でも、眼から鱗が落ちる内容だと思う。

■目次
第1章 三つの基本要素
カロリーよりも食事の質が大事
「座り続けること」が最大の敵
成果を出したかったらもっと寝る

第2章 小さな選択が大きな変化を生む
その一口で健康が決まる
座るのは喫煙より体に悪い
睡眠不足はあなたを別人にする

第3章 毎回正しい選択をする
炭水化物・タンパク質比率で選ぶ
家の中の食べ物を配置換えする
歩きながら仕事をしてみる

第4章 良い習慣を築く
砂糖は老化を促進する
代替甘味料は解決策にはならない
心と体のため20分ごとに2分歩く

第5章 自己免疫システムを強化する
表面の色で食べ物を判断する
風邪と睡眠の密接な関係
睡眠では質が量を凌駕する

第6章 生活習慣は遺伝子を上回る
新しい遺伝子を身にまとう
測定するだけで活動的になる
毎日8キロ歩く

第7章 もっと活力が出る生活をする
パンやライスを避ける
大皿料理で食べる量は10%増
運動後も脂肪は燃え続ける

第8章 タイミングが肝心
空腹時は悪食になる
早食いで肥満リスクは2倍
運動後は12時間気分が良い

第9章 応急措置
最初の注文が「アンカー」になる
体の両側を使う
照明でメラトニンを調整する

第10章 賢い選択
タンパク質に優先順位を付ける
友人にジャンクフードをおごらない
短期的な目標を見いだす

第11章 健康的に仕事する
ウオーキングミーティングの効用
オフィス机での食事は危険
睡眠不足は泥酔状態と同じ
……など全30章

■タンパク質に優先順位を付ける
以下の順に、タンパク質を摂取したほうがよい。

  1. 青果物(アスパラガス、アボガド、インゲン豆、ブロッコリー、カリフラワー、えんどう豆、ほうれん草)
  2. ナッツ(アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツ、ピスタチオ、クルミ)
  3. 海産物(ヒラメ、ニシン、サーモン、ほた願い、エビ、舌平目、マス)
  4. 白身肉(鶏肉)
  5. 乳製品
  6. 赤身肉(牛肉、鴨肉、羊肉、豚肉)
  7. 加工肉(ベーコン、サラミ、ソーセージ)
糖質制限食を始めたけど、タンパク質の中でも優先順位があるのは知らなかった。


■感想
翻訳者に限らず、ほとんどのデスクワーカーは、1日7時間以上は座っているのではないか?
しかし、長時間座るという習慣は、心臓疾患や糖尿病その他疾患にかかるリスクを急激に高める(Sitting is Killing You)。

本書は、健康的に働き、成果を出し続けるための、食事、運動、睡眠の方法を具体的に説明している。
米グーグルなどのIT企業は、社内にスポーツジムやサイクリング場を完備し、最新の研究、科学的根拠に基づいた健康的な働き方を実現している。

日本では勤務中にスポーツジムに行ったら怒られそうだが、フリーランスになった昨年から昼間にスポーツジムに通うようになったのは大正解だったと思う。

睡眠の質についてはまだ改善の余地がありそうだ。ベッドに入ったあとや、夜中に目を覚ました時に、ついついスマホを見てしまう癖は止めたほうがよさそうだ。

それから、できるだけ「座らない」ことを習慣づけたい。

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2016年1月11日月曜日

[書評] 仮想通貨革命 野口悠紀雄



<目次>
第1章 通貨革命が始まった
第2章 きわめて斬新なビットコインの仕組み
第3章 ビットコインに続くもの
第4章 現代の通貨はどこに問題があるか
第5章 通貨革命は社会をどう変えるか
補論 公開鍵暗号と電子署名

■はじめに
 本書によれば、ビットコインに代表される仮想通貨が、PC、インターネットに次ぐIT革命による第三の波だという。ビットコインが話題になっていることは知っていたが、それほど重要なことだとは思わなかった。ビットコインは、日本ではまだほとんど取引されていないようだが、現在の通貨より優れているので、いつかは今のお金を駆逐するらしい。もちろんビットコインの普及により不利益を受ける人達(政府、銀行)が反発するだろうが、この流れは止められない。あと何年で今のお金に置き換わるのか楽しみだ。

■ビットコインの仕組み
①電子署名を用いてビットコインを送信すること
②取引をP2Pネットワークで維持するブロックチェーンに記録すること
③ブロックチェーン改ざん防止のため、プルーフオブワークの計算を課すこと

ビットコインの仕組みの基礎になった「ナカモト論文」によれば、1つの電子コインは、連続するデジタル署名のチェーンと定義される。つまり、ビットコインは署名を用いて受け渡しをしている。この際、なりすまし、改ざん、否認を防止するため、以下の三点を確認しなければならない。
①送金した者が、確実に署名者であること(他の者でないこと)
②通信途中で金額などが(傍受者などによって)書き換えられていないこと
③送付者は、送付の事実を後になって否認できないこと

「電子署名」、すなわち公開鍵暗号とハッシュ関数を用いた技術で解決している。

■ビットコインと電子マネーの違い
ビットコインと電子マネーとでは、維持運営する仕組みはまったく異なる。
電子マネーとしては、支払いに先立って入金し(「プリペイド型」)、その残額等の情報が記録されているICカードが主流である。

さらに電子マネーには、以下の2つのタイプがある。
  • クローズドループ型:電子マネーが利用されるたびに、発行者に戻すことで、二重使用を防止するタイプ。 例)
  • オープンループ型:利用された電子マネーが発行者を経由せずに転々流通できるタイプ。運営コストが高い。例)Edy
電子マネーの問題点は以下のとおり。
  1. 運営コストが高い。
    • クレジットカードと同様に、電子マネーでも手数料(カード利用額の2〜5%)を店舗側がカード発行会社に対して負担しなければならない。
  2. カード発行会社にとって手数料が安く、採算が合わない。
一方、ビットコインの利点は以下のとおり。
  1. P2Pネットワークによるブロックチェーンの維持と、プルーフオブワークの計算を課すことにより、二重使用を防止しており、運営コストが非常に低い。
  2. ビットコインは、通常の現金と同じように、転々流通することができる。
  3. 電子マネーでは、カードの盗難、紛失等のリスクがあるので、入金額に限度があるが、ビットコインでは、そうしたリスクはなく巨額な送金が可能になる。
  4. 電子マネーは特定の通貨に関連しており、国際送金には使用できない。これに対して、ビットコインは非常に低い送金コストで国際送金が可能になる。

■感想
本書は、ビットコインの技術的内容も非常に丁寧に説明している。その仕組みは非常に難解だが、インターネットと同様に、世の中を変えるインパクトがあるので、本書を何度も読んで理解したいと思う。
ビットコインは、政府や銀行が発行する現在の通貨と異なり、とてもリベラルなものと感じた。ビットコインが普及すれば、国境を越えて個人間で仕事を請け負うことができるようになるであろう。従来では送金コストが高くて成り立たなかったような小さなビジネスが国境を越えて成立することになりそうだ。発展途上国の優秀な個人が恩恵を受けそうだ。つまりグローバルでは、ますます貧富の格差が縮小される方向に移行していくだろう。


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2015年11月9日月曜日

[書評] 投資家が「お金」よりも大切にしていること 藤野英人



目次 
第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目(8割の学生が「お金儲け=悪」日本人は世界一ケチな民族 ほか)
第2章 日本をダメにする「清貧の思想」(バットマンはなぜ「かっこいい」のか?日本のヒーローは…公務員 ほか)
第3章 人は、ただ生きているだけで価値がある(経済って、よくわからない…残業250時間の「ブラック企業」 ほか)
第4章 世の中に「虚業」なんてひとつもない(日本人は仕事も会社も同僚も、あまり好きではない「会社」とは何か? ほか)
第5章 あなたは、自分の人生をかけて社会に投資している、ひとりの「投資家」だ(投資は、「お金」ではなく「エネルギー」のやり取り
エネルギーの8要素 ほか)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
久しぶりに「お金」や「投資」について考えさせる素晴らしい本に出会ったので、ここでシェアしたいと思います。

  • 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目

 日本の学生が8割がお金儲けに対して悪いイメージをもっている。だが、こうしたネガティブなイメージは、お金への執着心の裏返しであるとして、著者は日本人のお金に対する考え方を批判している。
 実際、日本の現金、預金の比率は、55.5%を占め、他国(米国は15.3%、イギリスは32.2%、ドイツは39.4%、フランスは31.3%)に比べて、著しく高い。
 また、年間の成人1人あたりの寄付金額は、米国が13万円、イギリスが4万円なのに対し、日本はたったの2500円である。
 また、海外では、投資信託を20年から30年くらいのスパンで持つのが一般的ですが、日本人の平均保有年数はたったの2.4年。つまり日本人こそ自分の利益のことしか考えていないハゲタカであるして痛烈に非難している。

  • 経済は「互恵関係」
 私達は産まれたときから消費活動を通じて、経済を動かす主体であり、我々の消費活動は必ず誰かの生産活動につながっている。良い消費者になることは、良い社会を創ることにつながる。だからこそ、自分のお金の使い方に自覚的になり、店員に威圧的な態度を取ることなく、良いサービスに対して「ありがとう」といえる人になることが必要だという。

  • 会社とは何か?
 株式会社の会社は英語でCompanyといい、この言葉の元々の意味は「仲間」であり、「株式」はshare、すなわち「分け与えること」を意味する。故に、株式会社とは、本来、互いに助け合いながら、自分の能力を発揮できる場所のはずだ。
 しかし、日本人の多くは、日本人は、他国に比べ、仕事も会社も同僚もあまり好きでないという。
 会社は多様な人間の集団であるので、良い面もあれば、悪い面もあるが、著者によれば、日本には全体として不真面目な会社が多いらしい。つまり、社会との関わり方、顧客との向き合い方、従業員との関わり方を真剣に考えている会社が少ないという。
 一方、良い会社の例として、

  1. インドのインフォシス(「私の成功とは、長期的な人間関係を築いて、人に奉仕することだ」)
  2. ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ(社是はかっこいいこと)
  3. サイバーエージェント(社長とはお客様の代理人である)

が挙げられている。
  • あなたは、自分の人生をかけて社会に投資している、ひとりの「投資家」だ

「投資とは、いまこの瞬間にエネルギーを投入して、未来からのお返しをいただくこと」
「エネルギー」=情熱×行動×時間×回数×知恵×体力×お金×運
「未来からのお返し」=プロダクト(モノやサービス)×感謝×成長×経験×お金

最大のお返しは「明るい未来」である。

■感想
 中国人の友人が、「本当に日本人は「お金」の話をしない。それどころか、むしろ隠したがる人が多い」と言っていた。彼は現在、典型的な日本大企業に勤務しているが、会社の上司に、「将来、中国大連で一番の金持ちになりたい」と話したら、「清貧の思想」に基づき説教をされたみたいだ。また、最近、自分の周囲でも、「会社を辞めたい」、「転職したい」という人が多いなと感じる。特に日本の「大企業」が急激に魅力を失っているんだなという感じがする。

 本書を読んで、「清貧の思想」が日本をダメにしており、これからはみんなが清らかで豊かになることを目指すように「お金」についてもう一度考えなおすべきだと感じた。
 
 個人的にも、もっと自覚的に消費を行いたいと思う。サラリーマンのときは、毎月決まった給料を手にできるので、けっこう無駄遣いや衝動買いをしていたと思う。今は個人事業主となって、確定申告も必要であるので自覚的に消費を行えるようになってきた。自分が応援したい会社の製品を購入し、新しいことに挑戦している会社に投資したい。自分自身が明るい社会を創る主体であることを自覚したいと思う。
 
 現在、特許翻訳者として生計をたてている自分は、エネルギーを特許翻訳という業務に投資していると言える。
 この仕事の「未来からのお返し」は何か?
 
  1.  翻訳業を通じて英語を学ぶことで、将来的にも日本と海外の間で働く機会を得られる。
  2.  特許文献を通じてテクノロジーを身につけられる。
  3.  個人事業者として、自由に能動的に働くスキルを身につけられる。
  4. 顧客からの感謝やフィードバックを受けられる。

 
 将来、人工知能が発展し、翻訳業務はコンピュータに置き換わってしまうかもしれない。その前に、この業務を通じて成長し変化に対応できるようになりたい。
 
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2015年10月14日水曜日

[書評]2045年問題 コンピュータが人類を超える日 松田卓也



<2045年問題 コンピュータが人類を超える日 松田卓也>
■目次 :
1章 コンピュータが人間を超える日―技術的特異点とは何か
2章 スーパー・コンピュータの実力―処理速度の進化/
3章 インターフェイスの最先端―人体と直結する技術/
4章 人工知能開発の最前線―意識をもつコンピュータは誕生するか/
5章 コンピュータと人類の未来―技術的特異点後の世界/
6章 コンピュータが仕事を奪う―大失業時代の予兆/
7章 人工知能開発の真意―コンピュータは人類を救えるか

一説によれば、2045年には、コンピュータの能力が全人類の知性を超える可能性があるという。本書では、人工知能が人間の職業を奪っていく状況だけでなく、映画「ターミネーター」や「マトリックス」などに描かれた、人間を支配する未来についてわかりやすく説明している。

■コンピュータと人間の違い
コンピュータが人間より優れている点は計算能力である。一方、人間は、画像や音声などの雑多な情報の中から意味のある情報を読み取るパターン認識能力が優れていると言われている。このパターン認識能力のおかげで、人間は人間の顔、イヌなどを抽象化して認識することができるのである。

人間が少ない情報から大きなパターンを認識する際のエラー例が紹介されている。
原始人が草むらの近くを歩いていると、草むらからガサガサという音がしたとします。この場合、近くに猛獣がいるかもしれないし、風で草がなびいているだけかもしれない。
そこで、この原始人は逃げることを選んだのですが、結果は単なる風でした(「タイプ1のエラー」)。

 また、別の原始人が草むらがざわめいているので、ほとんどの原始人は逃げたが、この原始人は風だと思って逃げなかった。しかし、実際に草むらに猛獣が潜んでいて、この原始人は食べられてしまった(「タイプ2のエラー」)。

ライプ2のエラーを犯した原始人はすべて食べられ、タイプ1のエラーを犯す原始人だけ、つまり怖がりな人間だけが生き残ったと言える。

■人工知能開発の最前線
現在、欧米では人間の脳にそっくりな人工知能をつくる開発に、大規模な投資が行われている。
1.アメリカのシナプス計画
IBMのSyNAPSE(Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics)計画は「認識するコンピュータ(Cognitive Computing)」の開発を目的とし、これは「進化したアルゴリズムと、シリコンの神経回路を駆使して、この認識するコンピュータは経験を通じて学び、事象間の相互関係を見出し、仮説を立て、蓄積していく」ものとされている。

2.ヨーロッパのヒューマン・ブレイン・プロジェクト
このプロジェクトでは、人間の大脳新皮質の最小単位である新皮質カラムをスーパーコンピュータでシミュレートしようとするものである。

いずれのプロジェクトも、チェスに勝つなど何か特定の目的だけに特化した「弱い人工知能」ではなく、意識を備えた「強い人工知能」の開発に向かおうとしている。

■コンピュータと人類の未来
未来にはコンピュータと人体が一体化され、人間の能力は格段に進歩すると考えられている。
 更に、巨大なコンピュータの中に、希望する人の意識をアップロードして、肉体が死んでもコンピュータ上で生き続けることができる時代がくると予想する。これを「マインドアップローディング」と呼ぶ。
 最終的には、全宇宙すべてがコンピュータになってしまうと予想されている。これを宇宙の「ウェイクアップ(覚醒)」と呼ぶ。このとき、コンピュータは、全宇宙の情報を管理し、人類に代わって宇宙を支配しているという。

■感想
 2045年、つまり今後30年のうちにコンピュータが人類全体の能力をはるかに超えてしまう「技術的特異点」を迎えるという。SFの世界だと思っていた世界を、多くの人が経験することになるという。ほとんどの職業は、コンピュータに置き換えられたとき、果たして人間はどのような暮らしをしているのだろうか?
 ホーキング博士をはじめとする多くの権威ある人たちがこぞって、人工知能の進化により人類が終焉すると警告している。技術の進歩は人類の発展に寄与するものと楽観視してばかりいられないのだ。

「マトリックス スペシャル・バリューパック (3枚組)」


「ターミネーター(日本語吹替完全版)コレクターズ・ブルーレイBOX」


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2015年2月25日水曜日

[書評] 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法



<残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法>

■目次
序章 「やってもできない」ひとのための成功哲学
第1章 能力は向上するか?
第2章 自分は変えられるか?
第3章 他人を支配できるか?
第4章 幸福になれるか?
終章 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!

著者は、若者の就職難、リストラ、自殺者3万人の日本を残酷な社会と呼び、グローバル資本主義に突き進む日本社会における、勝間氏に代表される自己啓発ブームに警鐘を鳴らす。

「インディペンドに生きるために、お金と能力が必要であり、そのために努力が必要である。」として、好きでもない、資格や語学の勉強に、時間とお金を費やすことが本当に幸せなのか?
なお、著者は、出自、人種、性別、年齢など個人の属性ではなく、学歴、資格、職歴などで評価する能力主義は、差別のない平等な社会を築くためのインフラであることも認識している。
しかしながら、それでも残る自己啓発に対する疑問を、進化心理学や行動遺伝学に基づいて、説明していく。
そして、ネットが発達した現代社会では、ロングテールの中のニッチ市場に「好きを仕事に」することができると主張する。

■能力は向上するか?
 米国認知心理学者ハワード ・ガードナーによれば、人の知能は、さまざまなモジュールの組み合わせによりできており、言語的知能や論理数学的知能に優れた人もいれば、身体運動的知能や音楽的知能に秀でている人もいる。
 また、米国教育心理学者アーサー・ジェンセンによれば、知能(IQ)の70%は遺伝によって決まるという。もちろん、ある程度は、これらの能力は教育によって伸ばすこともできるが、時間と資源が限られているので、個人として、得意な能力、つまり好きなことに資源を集中するほうが最適な戦略と言える。
 しかし、「好きを仕事に」することにも、リスクがつきまとう。それは「好きなこと」が必ずしも市場で高く評価されるものではないというだ。これは、TV局のADやタレントが、TV制作会社やタレント事務所から搾取されている現状からも理解できる。

■自分は変えられるか?
自己啓発の思想は、「まず自分が変われば、相手や世界も変わる」という発想に結びついている。しかし、私は変えられるのか?

結論から言えば、人間の心理や感情は進化の過程の中で自然淘汰によって形成されたものなので、自分を変えることは非常に難しいのだという。
「嫉妬」「恐怖」「嫌悪」「驚き」などの感情も、子孫を残すため、または過酷な環境を生き抜くために有益なので、性淘汰によって広がっていく。なお、「怒り」「悲しみ」は集団内の関係から生じる感情で、人などの社会的な動物に特有なものらしい。

また、心理学研究者ジュディス ・リッチ・ハリスによれば、「人は自分に似た人に引き寄せられる」という引き寄せの法則も、進化の過程で獲得したものであるらしい。


■貨幣空間ではどのように振る舞えばよいか?
我々の住む社会は、以下のような空間に分類される。
  1. 「政治空間」権力ゲームが行われるフィールド。勝者を頂点とする階層構造。
    • 「愛情空間」2人~10人くらいの人間関係で、半径10メートルの小さな世界だが、人生の価値の大半を占める。
    • 「友情空間~政治空間」20~100人くらい、半径100メートルの世界。
  2. 「貨幣空間」お金を媒介にして誰とでもつながるので、その範囲は無限大だが、人生の価値はきわめて小さい。

敵を殺して権力を獲得する政治空間と違って、貨幣空間では、「しっぺ返し戦略」、即ち、まず相手を信頼し、相手が協力すれば信頼関係を続け、相手が裏切れば、自分も裏切る。裏切った相手でも反省すれば、即座に相手を信頼して協力するという方法が最適だという。

また、個人の属性が常に問われる政治空間と違って、貨幣空間は、個人の属性にとらなれないフラットな世界である。

今、グローバル市場経済の中で、この貨幣空間はますます拡大している。

■他人を支配できるか?
自己啓発は、相手を操ることを目的に、意図的に自分を変えるものである。これには非常に頷ける部分がある。例えば、「影響力の武器」という本には、返報性、権威、希少性、好意、社会的証明、コントラスト効果、一貫性という手法が説明されている。この本は、顧客が物品を購入してもらうためのテクニック、つまり他人を支配する方法として、営業等によって読まれている。

■結論
生物は、自分に適したニッチ(生態的地位)を見つけることで、過酷な進化の歴史を生き延びてきた。我々も、グローバル市場に目を向け、その中でニッチを見つけていくべきだ。

■感想
独立して働き始めようとしたタイミングで本書に出会えたことは幸運だと思う。私自身もたくさんの自己啓発本を読んできたが、それは会社の中で出世するためであったり、またはいい会社に転職するためだったという気がする。しかし、本書によれば、本来持っていない能力を向上させたり、自分の性格を変えることは難しく、人はそれぞれ固有の能力を持って生まれてくる。我々は、それを磨いて、グローバル市場の中でニッチな市場を見つけていけばよいということだ。会社という閉じられた空間で権力ゲームに巻き込まれるよりも、ずっとエキサイティングな人生だと思う。




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2012年1月26日木曜日

[書評]HAPPIER―幸福も成功も手にするシークレット・メソッド




現代人は、前の世代より明らかに物質的には豊かになっているのに、心理的には貧しくなっているという。
本書は、ハーバード大学で人気No.1の講義をまとめたもので、自分自身の内側に目を向ける機会を提供するとともに、我々がより幸せに生きるのを手助けする。

誰かが「良書とは、読む前と読んだ後で、人生の質が変わる本だ」といったが、
本書はまさしくそんな一冊だ。



■目次
1 幸せとは“究極の通貨”だ(問い中の問い、現在の利益と未来の利益、幸せの正体、究極の通貨、幸せになるための目標設定の仕方)
2 誰もが幸せになれる、仕事、学習、人間関係のあり方(「学ぶ幸せ」を習得する、「働く幸せ」を味わい尽くす方法、第8章 幸せな人間関係を築く秘訣)
3 永遠の至福に向けて(幸せブースター、つかの間の喜びを超えて、光り輝く勇気、自己の利益と思いやり、内なる賢者、ゆっくり生きても充分間に合う、幸せ革命、永遠の幸福へ―これがすべてです)

■4つの幸せのモデル
①快楽型:「現在の利益」と「未来の不利益」が混在すること。(例)ジャンクフード・バーガー
②出世競争型:「現在の不利益」と「未来の利益」が混在すること。(例)ベジタリアンバーガー
③悲観型:「現在の不利益」と「未来の不利益」が混在すること。(例)最悪のバーガー
④至福型:「現在の利益」と「将来の利益」をもたらしてくれること。(例)健康で美味しい理想的なバーガー

本書の中で、上記の幸せのモデルが紹介されている。
これは、退職決断のための「黄金基準」によく似ている。

我々は、当然ながら、上記④の「今も未来も幸せでいられる」選択をすべきだ。
楽しみながら学ぶことは、「現在の利益」を得ると同時に、未来の自分に役立つ「未来の利益」も見込むことができる。
信頼できる仲間と、ともに成長しあえる関係を築くことも、至福型モデルだと言える。

つまり、幸せを「喜びと意義の同時体験」だと定義することができる。

我々は、「自分に備わった能力を最大限に発揮しようと努めながら、挑戦的な活動に従事している」と感じるときに、深い充実感を得るという。

■幸せとは、”究極の通貨”
我々の究極の目的は、幸せの実現であるという。だから、富や名声は、幸せに貢献しうるものだが、本質的な価値を持たない。富や名声は、幸せに換算されて初めて価値を持つという。

しかしながら、我々は、時々、物質的な富が究極の目標の地位に押し上げられていることが起こりうる。ただし、それが悪いことではない。物質的繁栄は、個人だけでなく、社会全体の幸せにも貢献しうるし、経済的安定は、意義と喜びを見いだせない仕事などから、解放してくれる場合がある。
しかし、価値があるのは、お金自体ではなく、それが私たちにもたらせてくれる幸せな体験にある。

■感謝を表明する
「3 永遠の至福に向けて」の章に、「感謝日誌」を毎日つけることで、心理的にも肉体的にも、健康のレベルを大きく上昇させることができうることが記載されている。毎晩、最低5つ感謝すべきことを見つけることで、人生における些細なことでも、感謝の対象として見ることができ、喜べるものになるという。

■幸せの6つの秘訣
①自分に人間として生きる許可を与える
②幸せは、意義と喜びが交差する場所に横たわっている
③幸せは、社会的地位や預金残高などにではなく、心の状態に依存している。
④生活を単純にする
⑤心と体の密接な結びつきを忘れない
⑥可能なかぎり頻繁に感謝を表明する

■感想
学生の時、「人生の目的」に関する講義を受けた事がある。
それは、大学の授業ではなく、大学近くのマンションの一室で、密かに行われた講義だった。
たしか浄土真宗の人たちがやっていたように記憶している。
講義の内容は次のとおりだ。
多くの人は、人生の頂点に目標を定める。例えば、歌手や俳優になりたいとか、医者や弁護士になりたい、のように。
しかし、夢を叶えた後も、人生は続くことを認識しなければならない。
夢を叶えた後、人生の道を踏み外してしまう人が多いことを、何人もの有名人を挙げて説明していた。ドラックに溺れる者、事件やスキャンダルに巻き込まれ、転落人生を送る者。
たとえ人生の頂点に立つことができても、そこに居続けることはできない。
高い頂上に登るほど、急な下り坂を降りなければならないと。
それでは、「人生の目的」はどのように決めればよいのか?

「あと一週間の命だったら、何をするかを考え、そのことに人生を捧げなさい」

この講義に感銘を受け、私自身、この問いを何度も自問し、内なる声に耳を傾けてきた。
そのため、苦難も多かったが、迷いながらも、いろいろな事に挑戦できたように思う。この講義がなかったら、今の自分はなかったと言える。

オウム真理教など新興宗教も記憶に新しかった時代なので、勧誘されはしないか心配したが、そんな素振りは、全くなかった。

本書の中に「もしも私たちが、80歳のときに生まれ、徐々に18歳へと近づけるとしたら、私たちの人生は果てしなく幸せなものになるだろう」という言葉が出てくる。

きっと、その講演は、若い学生が人生に迷わないように生きてほしいという目的で行われたものだったと思う。

本書は、この講義に匹敵するほど、素晴らしい内容だ。
人生の道しるべを示してくれる作品だと思うので、将来に不安を抱えている若い人たちには、ぜひ読んでもらいたい。

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2011年12月28日水曜日

[書評]現代語訳 般若心経 玄侑 宗久 (著)



この数年間、数多くの書籍を読み、多少は学んできたつもりだが、知識が増えることが必ずしも「しあわせ」に繋がらないのではないかと感じ始めている。つまり、知れば知るほど、「これはこういうものだ」「こうじゃなきゃいけない」という概念に囚われてしまう。
般若心経は、こうした捏造された「私」から解放してくれる。
私自身、宗教心が強い人間ではないが、何気なく手に取った本書が、今年、一番影響を与えた書籍かもしれない。

■はじめに
デカルトの「近代的な自我」の提唱にあるように、人は生後成長と共に、自我の確立に向かうもので、社会は自立した個が連携して構成されるものであると、我々は信じこんできた。
しかしながら、本書では、こうした「個」の錯覚が元になった自己中心的な思考が「迷い」や「苦しみ」の根源であると述べている。

ソクラテスは、自己とは身体よりもむしろ霊魂であり、この霊魂をよい状態に保つことが「しあわせ」であると考えた。しかしながら、ソクラテスは、「しあわせ」に至る手法を確立することは出来なかった。

それに対し、世尊(ゴータマ・シッダールタ、後の「ブッタ」)は、理知的な分析の限界を認識し、瞑想という体験的な「知」の様式である「般若」を用いて、「しあわせ」の実感に近づいたという。


■「色、受、想、行、識」という五蘊は、すべて「空」である
五蘊とは、私たちの身心を構成する集まりで、具体的には、色:人間の肉体を意味したが、後にはすべての物質も含んで言われるようになった、受:感受作用、想:表象作用、行:意志作用、識:認識作用 をいう。

我々は、五蘊を、自分自身だと錯覚しやすいが、世尊は、五蘊は皆実体がなく、関係性のなかで仮に現れた現象、すなわち「空」であると述べている。例えば、人間と、犬、蜂や鳩が同じ花瓶を見たとしても、それぞれが持つ感覚器や脳が違う以上、まったく違った見え方をする。

また、「不生不滅」「不垢不浄」「不増不減」、即ち、あらゆる現象は、本当は生まれもしなければ、滅することもない。汚れることもないし、浄らかになることもない、増えるとか減ったということも、錯覚でしかないという。

例えば、水が「減った」ときも、誰かがコップの水を飲んだなら、その人の胃を通り、腸で吸収されただけ。また、蒸発して「減った」のなら、水蒸気に形を変えたにすぎない。地球規模で見れば、何も減っていない。

以上のように、仏教においては、あらゆる現象は単独で自立した主体をもたず、無限の関係性のなかで絶えず変化しながら発生する出来事であり、かつ秩序から無秩序に向かう(壊れる)方向へ変化しつつあるという見方をするのである。

■共時性

共時性、シンクロニシティ(英語:Synchronicity)とは、事象(出来事)の生起を決定する法則原理として、従来知られていた「因果性」とは異なる原理として、カール・ユングによって提唱された概念である。共時性(きょうじせい)とも言う。

何か二つの事象が、「意味・イメージ」において「類似性・近接性」を備える時、このような二つの事象が、時空間の秩序で規定されているこの世界の中で、従来の因果性では、何の関係も持たない場合でも、随伴して現象・生起する場合、これを、シンクロニシティの作用と見做す。


ちょっと難しいですが、「空」を実感するとき、「同時」なる関係性が感じられるだけでなく、「異時」さえ同じ地平に包み込まれてしまう。
つまり、誰でもあらゆる命が繋がっていると感じられたり、これまでの全ての時間が「今」に活きているというような、そんな実感をもったとき、人は人生全体に充実感をもったりするものである。

■名前が助ける知、曇らせる知
人は「名づけ」によってものごとを確定的に受けとめてしまう。
例えば、「花」という言葉は、そう呼ばれた途端に、「花」以外のものとの関係性が絶たれてしまう。また「花」は散りうるものなのに、言葉で示されると不変に存在しうるもののように感じられる。

また、お腹が「しくしく」痛むのは、単なる感覚だが、これが「病」というレッテルを貼られると、本来備わっている自然治癒力が著しく低下し、症状が悪化してしまう。

このように、あらゆるものに名前がつけられ、概念化し、思考が生まれる。名づけられた「モノたち」はやがて互いに対立する存在になりうる。こうして「全体性」が分断され、「空」から遠ざかってしまう。

言葉というものが、どのような状況で誰に向けられたものであるかを抜きに一般化されて伝えられるべきではないのである。


言語学では、言葉の発生について、以下の2種類の分析がある
1.コミュニケーションのために生まれた
2.すでに生まれてしまった概念整理のために生まれた


例えば、「過去、現在、未来」「右、左」といった複雑な概念も、言葉によってスムーズにコミュニケーションできる場合もある。
しかし、例えば、犬同士のコミュニケーションのように、言葉を必要としない場合も多いし、逆に、言葉によって誤解が生じる場合も多い。

■波動が、「いのち」に直接働きかける
仏教では、「般若波羅蜜多」「なんまいだぶつ」「なんみょうほうれんげきょう」などの意味を超えた音の響き、呪文が、大脳皮質を飛び越えて直接「いのち」に働きかける。こうした呪文を唱えつづけることで、空性なる「いのち」の真ん中にどーんと座っている自分を発見し、全体性の中にとけ込んでいくのを感じることができる。

■感想
私自身、大学に入った頃までに、メディアや両親、周囲の人たちによって価値観が作られ、「こうしなきゃいけない」「こうあるべきだ」という様々な固定観念に縛られ、捏造された「自分」によって、勝手に苦しみを感じていたように思う。
修行のつもりで、日本を飛び出し、東南アジア、南アジア、中東などの発展途上国を旅するうちに、こうした偏狭的な価値観を変えることができた。物質的な豊かさよりも精神的な豊かさの方が大事だと思うようになった。
本書は、自分が体験を通じて感じていたこと、つまり「すべては空」「共時性」などを、量子論などを用いてわかりやすく説明しており、大変興味深かった。
「人はどうしたら苦しみから自由になれるのか」
本書は、そんな誰もがいだく迷いや苦しみを取り除いてくれる良著である。

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2011年11月28日月曜日

[書評]座右の諭吉 才能より決断 齋藤 孝



どの国においても、お札には、国民的な英雄の肖像が記載される。
ネットで調べると、私が生まれた当初、1万円札には聖徳太子が採用されていたようだが、1984年からずっと福沢諭吉が採用され、長年目にしているはずだが、実は何をした人なのか、あまり知らない。
本書を読んで、彼の業績だけでなく、その人物像や人生訓も知る事ができ、日本の最高額のお札に記載されるにふさわしい人物であることが理解できた。

■目次
1 独立の章(精神はカラリとしたもの
喜怒色に顕わさず ほか)
2 修業の章(書生流の議論はしない
大事なのは「意味を解す」こと ほか)
3 出世の章(人生をデザインする
まず相場を知る ほか)
4 事業の章(なぜすぐにやらないのか
時節柄がエラかっただけ ほか)
5 処世の章(雑事を厭わず
大切なのは健康とお金 ほか)

■運動体の中心になる
福沢は、苦労人のようだ。九州の片田舎で、下級武士の末子として生まれ、幼くして父を亡くし養子に出されていた。しかし、学問に出会い、他に寄りかからない個としての人格を確立するため、一生涯にわたって学び続けた。自らが運動体の中心になって、アンテナを世界に伸ばし、新しい情報を取り入れ、日本の開国を支援した。

■活用なき学問は無学に等し
福沢は、机上の学問では意味がなく、どう活用するかを考えて学ぶ必要があると説いている。
これには共感する。本も読んだだけではすぐに忘れてしまう。本を読む事で、読んだ前と自分の行動が変わり、考え方が広がる。そうした本の読み方をしたいと思い、ブログを書くようにしている。

■人生をデザインする
彼は中津藩を脱出し、長崎、大阪、さらには江戸へと渡り歩いた。アメリカ、ヨーロッパにも渡り、変化を求めて脱出を繰り返している。
「川の流れに身をまかせ」るのではなく、自分の人生を自分で切り開いていく生き方に憧れてしまう。

■感想
福沢諭吉を知れば知るほど、大前研一氏に似ているなと感じる。
どちらも名著を残した作家、大学の創設者であり、マルチな経済人。
それらに加え、どちらも悩む事がなく、「精神がカラリと晴れた」、合理的な考えに徹した人物という点で共通しているように思う。

若い人たちは、スポーツ選手や歌手、俳優を憧れの対象としていることが多い。

しかし、時代が変化する時には、福沢諭吉や大前研一のように、旧態依然とした思想を突き壊し、学び続けていることこそがアイデンティティであるような啓蒙家が必要だと思う。
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2011年11月27日日曜日

[書評]プロフェッショナルを演じる仕事術 若林 計志 (著)



■目次
第1部 ストーリーが人を動かす(取調室でカツ丼を食べる謎
ストーリーはどこからやってくるか
プロフェッショナルのスゴさを「見える化」する
仕事をゲームに変える方法)
第2部 「プロフェッショナル」と「自分」をシンクロさせる(「負ける技術」を身につける
トイレを磨くと儲かるか
プロフェッショナルからの正しい学び方)


俳優が行う演技とは、一見無関係な他の職業においても、実は役にのめり込んで「演ずる」ということが求められている。
本書は、プロフェッショナルとして認められるビジネスマンにとって、周囲の期待に応えて、与えられた役割に没頭し、演じきることが大切だと述べている。

この「演技」と「プロフェッショナル」との関係を説明するために、
「スタンフォード監獄実験」、「プラシーボ効果」、「組織社会化」、「ピグマリオン効果」、「予定調和」などのキーワードを用いて、丁寧に説明しているので、思わず納得してしまう。

また、会社にとっても、従業員に役割を演じてもらうために、仕事の目的を明確にしたストーリーを与えることが必要だという。

■「負ける技術」を身につける
成長しつづけるためには、様々な事に挑戦し、多くの失敗を乗り越える必要がある。そのために、「負ける技術」を身につけ、失敗を真摯に受け止め、失敗から学んでいくことが大事だ。
本書の中で、特に興味深かったのが、コンプレックスについて。
ユング心理学では、コンプレックスとは、無意識の領域にあって、自我が意識することが出来ないという特徴を持っており、その中核となすのが、
「自我の許容量を超えていたがために、無意識の領域に抑圧された経験」
「個人的無意識の中に内在しているが、未だに意識化されていない内容」だそうだ。
以下は、コンプレックスから自我を防衛するための典型的な反応である。
①同一視
他者と自分を無意識のうちに混同することにより、安定しようとする働き。
有名人や学者などが同じ学校の出身だというのも、一つの同一視の反応かもしれない。

②投影
自分のもっといる性質を、他人の性質として捉えること。自分では意識していない欠点や不足、自分が密かに抱いている表面には出せない不都合な感情を、相手のものとして捉えること。
実は自分も相手と同じようなことをしていながら、それは置いといて、相手を責める。

③反動形成
反動形成とは、抑圧された欲求と反対のものが強調されて、態度や行動として出てくること。

相手を好きだけど、何らかの理由でそれが抑圧され、好きになってはならないという縛りがあり、そのために、意地悪な行動に出たり、普通じゃないほど過度の無関心を装ったりする。

詳細は、「やさしいユング心理学 第三章 コンプレックスとの対決」を 参照。

こうした行動は、自分も他人もしていることがある。
意識化することで、対応できそうだ。

■感想
著者は、Bond-BBT MBAプログラムの統括責任者であるだけあって、一冊にMBAのエッセンスの多くが凝縮されており、読み応えがある。ただし、とても分かりやすく説明しているので、新入社員にもお勧めしたい。

本書を読むと、会社や社会の中で自分はどんな役を演じたいかを考えさせられる。
演じたい役と、実際に求められている役が一致した人は、よいパフォーマンスができるだろう。

以前、映画ターザンを演じた役者が、その役のイメージがつきすぎて、それ以外のオファーが来なくなったと聞いたことがある。
専門性の高い職業を選んだあまり、その後、転職においても、結局、今までと関連する職業についてしまう状況に似ている。

変化の激しい世の中では、ある日突然、その職がなくなったり、海外にアウトソースされたりすることがあるかもしれない。
そのためにも、多くの役を演じれる役者になる方がよいのではないか?
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2011年11月10日木曜日

[書評]ウェブはバカと暇人のもの 中川淳一郎



梅田望夫氏は、著書『ウェブ進化論』の中で、ネットの世界を、テクノロジーがもたらす理想郷と捉え、頭の良いネットユーザーが集合知を利用して、様々なものを生み出していくweb2.0の可能性を高らかに宣言した。
(梅田氏の著書の書評はこちら→「ウェブ時代の5つの定理」)

一方、本書の著者中川淳一郎氏は、そうしたネットの可能性に期待しながらも、現実には、他人を平気で罵倒したり、他人の発言の揚げ足をとったりするネット世界に、嫌気がさし、気持ち悪さを感じていた。

本書は、こうしたネット世界の影の部分を描写し、ネットとの関わり方を考えさせられる。

■目次
第1章 ネットのヘビーユーザーは、やっぱり「暇人」(品行方正で怒りっぽいネット住民
ネット界のセレブ「オナホ王子」 ほか)
第2章 現場で学んだ「ネットユーザーとのつきあい方」(もしもナンシー関がブログをやっていたら…
「堂本剛にお詫びしてください」 ほか)
第3章 ネットで流行るのは結局「テレビネタ」(テレビの時代は本当に終わったのか?
ブログでもテレビネタは大人気 ほか)
第4章 企業はネットに期待しすぎるな(企業がネットでうまくやるための5箇条
ブロガーイベントに参加する人はロイヤルカスタマーか? ほか)
第5章 ネットはあなたの人生をなにも変えない

■品行方正で怒りっぽいネット住民
リアルの世界では、日本人の多くは、ものを強く主張したり、他人の行為を注意したりしない。しかしながら、著者は、ネットの世界だと、人を咎めたり悪口を書いたり罵声を浴びせたりする人ばかりだという。

特に、芸能人や有名人がうかつなことを発言してしまうと、「怒りの代理人」がネット上で何らかの正義感のもとに、罵詈雑言を書くという。

そして、著者は、「プロの物書きや企業にとって、ネットはもっとも発言に自由度がない場所である」と結論付けている。

■ネットで流行るのは結局「テレビネタ」
テレビは、Youtube等でアップされた番組をときどき見るくらいで、なんとなく、最近のテレビ局の低迷から、「テレビは終わった」のかと感じている。しかし、本書によれば、テレビはたしかにかつてほどの影響力はなくなったが、数千万人への人へアプローチでき、流行を生み出すことができる唯一のメディアであるという。そして、ネットとテレビは、非常に親和性が高く、ネットで検索されるキーワードや、ブログで話題にあがるネタも、「テレビネタ」が多いという。

■ネットでうまくやるための5か条
1.ネットとユーザーに対する性善説・幻想・過度な期待を捨てるべき
2.ネガティブな書き込みをスルーする耐性が必要
3.ネットではクリックされてナンボである。かたちだけ立派でも意味がない。そのために、企業にはB級なネタを発信する開き直りというか割り切りが必要
4.ネットでブランド構築はやりづらいことを理解する
5.ネットでブレイクできる商品はあくまでモノがよいものである。小手先のネットプロモーションで何とかしようとするのではなく、本来の企業活動を頑張るべき

■感想
私自身も『ウェブ進化論』等を読んだとき、個人が世界中の情報にアクセスし、自分自身の考えを大衆に向かって発言できるウェブの可能性に大いに期待した。そして、テレビをやめ、ネットでRSSやソーシャルブックマークを利用して、情報収集し、ブログ、SNSなど利用し、アウトプットするようにしてきた。
しかし、本書を読むと、ネットは、過度に期待するものでもないし、またSNS、ツイッター等で、どこまでプライベートをさらけ出すかについて、考えさせられる。できれば、リアルな世界で充実して生きるために、ネットを利用したいと思っている。

また、日本語圏と英語圏による情報格差が拡大していくのではないかと危惧してしまう。つまり、最近、米国トップ大学への日本人留学者数の減少が話題になっているが、これに加え、本書で指摘されたように、プロの物書きがネット上で発言を萎縮してしまうような状況が続けば、英語圏に比べ、日本語圏では、ウェブにおける知の供給者が相対的に低下していくかもしれない。

いずれにしろ、ネットも、テレビと同様に、誰もが(通信料を払えば)無料で利用できるので、ネットユーザーの多くを完全な「善」として捉えないようにしたうえで、ネットを利用したほうがよさそうだ。




2011年11月4日金曜日

[書評]誰も教えてくれない人を動かす文章術  齋藤 孝



仕事柄、技術文書を書くため、分かりやすく文章を書く方法を学んできた。有名どころだと、以下の2冊だ。
日本語の作文技術 (朝日文庫)
理科系の作文技術 (中公新書 (624))
これらの書籍は、読者に誤解を与えないように、内容を正確に記載するために大いに役立つ。

一方、本書は、こうした文章力ではなく、面白い内容を書くために、「独自の視点で物事を発見する力」と「文脈をつなげる力」を身につける方法を伝授している。齋藤孝氏の本は、好きでよく読んでいるが、本書も、新たな発見と文章を書きたいという意欲を与える作品だ。

■目次
プロローグ 人を動かす書く技術
第1章 「書く」ことで生活が劇的にチェンジする―エッセイからはじめる書く技術
第2章 まずゴールを決める―「書く」ことで世界観がガラリと変化する
第3章 ビジネスの文書力―稟議書・報告書・企画書・始末書・謝罪文の書き方
第4章 学生のための文章術―感想文・小論文・自己アピール文の書き方
第5章 メールは余力を残すな―おトク感を演出できる最高のツール
第6章 評価されるワンランク上の文章力―視点の身につけ方、読書力、文章の思考法

■エッセイへの段取り
(1)ネタ出し--面白いものを書き出す。会話をメモする。
(2)グループ分け--ネタを3つくらいのグループに分ける
(3)ゴールを決める--最後の文章を考える
(4)タイトルを決める--「つかみ」が大切
(5)通過地点を設定する

書く作業へ

文章を書く前に、「最後の文章を決める」という点が、書いている最中に方向性を見失わないために重要だそうだ。が、これがありきたりな結論や道徳的な結論(例:人に迷惑をかけるな)であってはいけないという。この結論の中に、ユニーク視点、新たな認識や発見があって、はじめて書くに値する文章になるということだ。そのために、イメージが離れたものを結びつけ、その結びつけ方に新たな意味を持たせればよいという(例:チームワークとあやとり感覚)。

次に、「タイトル」を決める工程だが、ここで、読者の関心を一気に惹きつけるようなタイトルの付け方が解説されている。
具体的には、「ゴールに対する疑問文の形にする」、「無関係に見える2つの事柄を持ってくる」という方法が示されている。
例として、「通勤地獄解消の決め手はあやとり感覚か」「論語と算盤」が挙げられている。

今まで、ゴールもわからず、文章を書いていたため、漠然とした内容になることが多くあったが、割りと上手く書けたときは、確かに最初に「ゴール」を決めて、一見無関係な事柄をつなげるように、謎解きをするように書いていたように思う。

以下、以前私が書いた「夜明けのレース」という文章を紹介する。
アフリカの寓話らしい。
~~~~~~~~~~~~~~
「夜明けのレース」
アフリカでは毎朝、ガゼルが目を覚ます。
ガゼルは知っている。
最も足の速いライオンよりも速く走らなければ、殺されてしまうことを。
毎朝、ライオンも目を覚ます。
ライオンは知っている。
最も足の遅いガゼルよりも速く走らなければ、飢え死にしてしまうことを。
あなたがライオンなのかガゼルなのかは問題ではない。
夜が明けたら、とにかく走ることだ。
~~~~~~~~~~~~~~~

人間も大昔は獣に追いかけられたり、獲物を探したりするために、森の中を走っていたんだろうな。

でも、世の中が便利になりすぎて人は、走り方を忘れてしまったように思う。
特に日本のように文明化された社会では、車やタクシー、公共機関に乗れば、走る必要もないのかもしれない。

レースといえば、
最近、大学入試中に、受験中の生徒しか知らないはずの試験問題がネット上の質問サイトへ投稿された事件がニュースで話題になった。試験終了後、大学が警察に被害届を提出したため、さらに報道がエスカレートし、結局、警察が通信履歴を調べ、一人の生徒を逮捕した。

この事件は、日本中の人々に注目されたが、そもそもネットで情報が簡単に探せる時代に記憶力だけを問う受験競争に意味があるのか。大学に入っても、職が保障されるわけでもないし、分からないことに出会ったとき、グーグルで検索すれば、過剰なまでに記憶する必要もないように思う。

それなら、いっそ、ガゼルやライオンのように、子供たちに走り方を教えたほうがよいのではないか。

走り方とは、寝る場所を確保して、食べるものを探して、生きていく力のことだ。
つまり、学校は、キャンプや山登り、海外をバックパック旅行するスキル等を教えるべきではないか。

夜が明けたら、走らねば・・・。


この文章では、アフリカで行われる生存競争のレースと、日本の受験レースという、一見無関係な事柄の中に、人間も動物と同様に「生きるための力」を身につけるべきだという共通点を見出し、これを結論した。私自身が、かつてキャンプや山登り、バックパック旅行をした経験があったので、この結論には、独自の視点に基づいた解釈が含まれていると思う。そして、その結論を導くため、いくつかの通過点を経過させて記載した。

本書のあとがきに、『文章力とは、この世を生きる力である』と述べられている。
自分自身が生き残るためだけではなく、他者と協調して生きる人間社会では、上述して「走り方」の他に、「人を動かす」ためのコミュニケーション力や文章力が必要なのかもしれない。

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