そこで、入門書として本書が非常に分かりやすくおすすめです。
- 日本語に主語は重要か? 「は」と「が」はどこが違う?
「が」は、動作の主体(いわゆる「主語」)を表す。
それに対し、「は」は、以下のように、話者によって文の主題を提示する。
- 母親は書籍で翻訳原稿を作成した。
- 書斎では、母親が翻訳原稿を作成した。(「書斎」について言えば)
- 翻訳原稿は母親が書斎で作成した。(「翻訳原稿」について言えば)
以上のように、同じ事実示しながら、「は」を用いて、異なる主題を提示していることがわかります。これを、「主題−解説」の構造と呼ばれています。さらに、以下のようにさまざまな格助詞(ガ格、ヲ格、二格、デ格、ト格、へ格、ヨリ格、カラ格、マデ格)を主題化することが可能です。
- 日曜日は母親が書斎で翻訳原稿を作成した。(二格:日曜日に母親母親が書斎で翻訳原稿を作成した。)
- 駅へは母親が迎えに行った。(へ格:母親が駅へ迎えに行った)
- 母親よりは私のほうが背が高い。(ヨリ格:母親より私のほうが背が高い。)
- その蛇口は水が出ない。(カラ格:その蛇口から水がでない)
- 駅までは徒歩で5分かかる。(マデ格:駅まで徒歩で5分かかる。)
- なぜ自動詞が多用されるのか? 受身文に秘められた日本人の世界観とは?
本来、自動詞は、「雨が降る」などの自然現象を表すときによく使われ(自然中心)、一方、他動詞は「私が衣服を洗濯する」など人間の行動が起点となり、物事を引き起こすことを表すときに使われます(人間中心)。
しかし、日本語では、英語と比べても、人間に関連することも自動詞で表現することが多いそうです。例えば、
私は驚いた。 I am surprised.
犯人が捕まった。 A criminal was caught.
富士山が見える。 I see Mt. Fuji.
君の気持ちがわかる。 I understand your feeling.
つまり、日本語では、人間の活動も自然界の流れの一つとしてとらえる傾向があるようです。
自動詞と他動詞の見分け方としては、
自動詞は、「ヲ格成分を持たない」もの
他動詞は、「ヲ格成分を持つ」もの
と区別できますが、但し、例外として、「起点」と「通過点」を表すヲ格は除外されます。
起点をヲ格とする移動動詞としては、「出る」「出発する」「離れる」などが挙げられ、
通過点をヲ格とする移動動詞としては、「歩く」「渡る」「走る」などが挙げられます。
- 主節と従属節からなる複文に表れる相対テンス
例文)日本を来るとき、同僚が送別会を開いてくれた。
英語の場合、「時制の一致」という考えのもと、以下のように表現されます。
When I came to Japan, my colleagues held my party.
そのため、日本語を学ぶ外国人は、
「日本を来たとき、同僚がパーティーを開いてくれた。」とすべきでは?と質問してくるそうです。
これを説明する際に用いられるのが、相対テンスという考え方。
これは、主節の事態が起こっているとき(つまり、「同僚が送別会を開いてくれた」とき)を基準にして、従属節の事態がいつ起こっているかによって、テンスが変わるという考え方です。
この例文では、従属節の「日本に来るとき」は、主節の「送別会を開いてくれた」ときよりも、後に起きる事態なので、ル形が使われるそうです。
一方、日本に同僚がいて、日本に着いたとき、日本で同僚がパーティーを開いてくれた場合は、タ形になるそうです。
■感想
英語の文法が昔から好きで、パズルを解くようで面白いと感じていました。同様に本書を読むと、外国人が日本語を学ぶ際の日本語文法も、論理的な規則があって、とても面白いものでした。本書は英語の文法との違いを中心に説明しているので、翻訳者にとっても有益な内容だと思いました。
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